264.お前が泣かせたんだ ページ21
＜チャニョル＞
そうやって、Aとの記憶を思い出しては、自分の中の熱が上がって。
また主張してくる熱。
トントン、ガチャ
「チャニョルー」
…俺をこんな状態にした張本人がやって来た。
「ベッキョン…」
「おかゆ持って来たぞー」
ドン、とベッドの上におかゆを置くベッキョン。
「あーんしてやろうか！」
「やめろよ気持ち悪い…」
俺は布団に顔を埋める。
「…白いな、お前の布団」
ベッキョンが呟いた。
「なんだよ」
「…いや、なんでもない」
ベッキョンはギギッと椅子を引きずって、ベッドの横に持ってきて座った。
「昨晩のこと覚えてないってほんと？」
ベッキョンはおかゆをふーふーしながら言う。
「うん…あのさ、やっぱ俺やらかした？」
「うん！やらかした！」
ベッキョンはそう言っておかゆから顔を離し、脚を組んだ。
…って、やっぱやらかしたのかよ…。
「な、なに、したの、俺…」
恐る恐る聞いてみる。
「んー…セフンがAを泣かせたから、それに怒った」
ベッキョンは珍しく真顔で言った。
…これは、嘘だな。
「嘘つけ。セフンがAを泣かせるわけないだろ」
そう言うと…ベッキョンは目を見開く。
「へー…」
ベッキョンはそう呟いて、おかゆをスプーンで掬った。
またふーふーしている。
おかゆは湯気が立っていて…熱そうだ。
「ん」
ベッキョンが、冷ましたおかゆの乗ったスプーンを差し出してくる。
「自分で食べるよ…」
俺はスプーンを奪い、食べた。
…ぬるい。
「こんな風にさ、すぐ冷めてくれりゃあいいのにな」
ベッキョンは背もたれに体重をかけた。
…ベッキョンも、一緒なんだろうな。
「愛してる？Aのこと」
ベッキョンが言う。
愛してる…か…
「うん」
人間、そう諦めがつくものではない。
「俺もだよー」
ベッキョンはそう言って顔を上に向ける。
俺は上半身を起こした。
「…本当に、望んだことなのかな」
「なにが」
「Aは…妊娠を、望んでたのかな」
ベッキョンは俺を真顔で見る。
「全部、お前のせいだろ」
「え？」
「お前と出会って、Aは変わったんだ。本当に自分のしたいことを、見つけて…それがなきゃ、Aは今頃苦しんでない。お前が、泣かせたんだ」
そう言いながら、ベッキョンは苦しそうな、泣きそうな顔をした。
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作者名：LUKE | 作成日時：2020年8月8日 21時
