246.秋空に消える ページ2
＜チャニョル＞
冷たい風が頬をかすめる。
目の前には街が広がっている。
手を伸ばせば、届きそうなのに、届かない。
「チャニョリヒョン…こんなところにいたんですか」
「あぁ…ジョンイン…」
ここは、Aと一緒に夕陽を見た丘。
その時はそばに、Aがいた。
「…ジョンインかよー」
「俺じゃ、不満ですか」
ジョンインは俺の隣に座ってくる。
「…2人、お似合いだと思うよ、俺は」
「…強がんないでくださいよ」
ジョンインを見ると、困ったように笑っていた。
「ははっ…久しぶりだからさ、失恋したの」
「そうですか。俺は最近しましたよ」
Aは、妊娠しているらしい。
検査薬で調べても、陽性だったそうだ。
それを知らされて、俺は…
どうしようもなく、ストレートに、落ち込んでいた。
「ここから出たら付き合うって…言ったのに」
その辺にあった石を投げる。
「…そうですね。Aは酷い人です」
「え？」
ジョンイナが、そんなことを言うなんて。
「酷い、人です…Aは。何も俺に言ってくれなかった。1番、そばにいたのに…」
妊娠した、ということは、ピルを飲んでなかったってことだ。
どうして、そんな選択をAはしたんだろう。
「ごめんなさい、めそめそしちゃって！」
「え？」
ジョンインは立ち上がった。
「まだ、終わってない。ここから、出る…出たら、Aを問い詰めてやります！」
「ジョンイナ、お前…」
強く、なったな…って言おうとしたけど。
ジョンインの頬に一筋光が見えたから、やめた。
「…そうだね」
俺も立ち上がる。
「付き合うっていう約束は果たせなくなっちゃったけど…みんなで歌って踊って、動物園にも行かなきゃ！」
終わったムードを出している場合じゃない。
まだ、ここから出る、という目標は達成していない。
それに…
新しい命が宿った。
それは、祝福されるべきことだ。
「…おめでとう、A、セフナ」
俺はその呟きは、少し暗く赤く染まった秋空に消えた。
この風景…すこし、寂しくなるな。
「戻りましょう。晩ご飯の時間になりますよ」
「…うん」
.
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作者名：LUKE | 作成日時：2020年8月8日 21時
