桔梗を探して 3 (ページ32)

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128.手を取るページ32

＜ギョンス＞

助けて。

『ギョンス、彼なら頼れるかもしれないよ』

レイヒョン、いいの？

俺…この人を頼って、いいの…？

「助けて、か」

チャニョルはしゃがんで、俺の手を差し伸べてくる。

「大丈夫。人が助けてって言えるのは、助けられてる時だよ」

「チャ、ニョル…」

視界が滲んで、チャニョルの大きい目が、見えなくなる。

「話してよ。ギョンスが抱えてるもの、全部」

俺は目の前に差し出された手を、取った。

チャニョルは微笑んで、その手を引っ張る。

「…ベッキョン、お前俺に、ヤの付く職業の人みたいって言ったよな」

ベッキョンを見ると、珍しくフードを取っている。

「うん」

「…その通りだよ。俺は、カタギじゃない家に生まれた」

「えっ…」

ベッキョンは目を丸くしている。

「しかも父親は、なかなかに権力を持った組織のボス。俺は…嫌だった。父親に厳しく育てられて…それが嫌で、逃げてきたんだ」

小さい頃から、アリを殺すのも嫌がるような性格だった。

そんなんじゃダメだ、と父親は俺を厳しく育てた。

次第に、本心に鍵を掛けて、本当の自分を閉じ込めて…でもやっぱり本心が、時々顔を出す。

人を傷つけるなんてダメだよ、言われたことに従ってばかりでいいの？

ちょうど反抗期、というのもあったんだろう。

当時16歳。

ある日…家をこっそり抜け出した。

特に行く場所も無い。

でも、あの家に居るのが嫌だった。

父は…平気で人を殺すような職業をやってる。

見つかったら俺も、殺されるだろうな。

後継者なら、兄さんが居るし。

兄さんに比べて俺は…出来損ないだ。

そう思いながら路地裏でひとり、しゃがんで俯いていた。

『どうしたんだい、こんなところで』

声のした方を見上げた。

猫目で優しい笑みを浮かべた男の人。

『…家出してきました』

『そうか…親と喧嘩でもしたのか？』

その人はしゃがんで俺と目線を合わせてきた。

『…父親に、耐えられなくて』

『父親…』

『俺、ヤクザの息子のくせに、アリ殺すのさえ躊躇うんですよ。父親は俺のこと…息子だなんて、きっと思って無いですよ』

俺は自嘲するように笑った。

『息子だなんて思ってない、か…』

なぜか、その人も…自嘲するように笑った。

『…俺に、ついてくるかい？』

差し伸ばされたその手を…俺は、取った。

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