桔梗を探して 3 (ページ11)

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107.本音の地下室ページ11

＜ギョンス＞

　カチャ

食料庫の鍵を開け、いつものように可動式の棚を動かし…

現れた扉の鍵を、また開ける。

地下へ続く階段を降りる途中。

「あぁ、今度はギョンスだ。足音がいつものだから」

「…レイヒョン」

「やぁ、ギョンス」

いつもより、笑顔な気がする。

良いことあったの、って聞こうとしたけど…

「Aと久しぶりに会ったんでしょ」

原因は分かってる。

「あぁ…相変わらず可愛かったよ。ちょっと太ったかな？」

「そう？そんなことないと思うけど」

俺は持ってきたご飯を机に置いた。

「ありがとう」

「チャニョルとも、会ったんでしょ？」

「うん。良い男だね、彼は」

「そう…だね」

確かに…チャニョルは、明るくて面白くて、良い人だ。

「ギョンス、彼に伝言があるんだけど、いいかな」

「なに？」

「ベッドの下は見たか、って聞いて」

「ベッドの、下？」

「うん。チャニョルはね、みんなでここを出る、と言ったよ」

「みんなで…ここを、出る…？」

「つまり、ギョンスもさ」

…ここを出る、なんて。考えたことも無かった。

「ギョンス、彼なら頼れるかもしれないよ」

「…俺は、ここ以外に居場所が無い。外に出たら、」

「殺される？」

「…かもしれない」

「ギョンスにとっては、ここの方が安全だもんね」

「…うん。だから、ミンソギヒョンに大人しく従ってるんだ」

「楽、か？」

レイヒョンは俺を笑顔で見る。

レイヒョンの笑顔は…柔らかいけど、どこか、俺を見透かしているようで。

「…うん。楽だよ」

レイヒョンには、嘘をつけない。

ここには監視カメラも無いらしいし…本音が言える。

「だから…余計なことを、しないでほしいんだ」

「そうだよね…でも、Aを救いたい、とは思わない？」

「…俺には、そんな力無いよ。レイヒョンみたいに、優秀じゃないからね」

俺は鉄格子の外に出て、鍵を閉める。

「実験用の睡眠剤、もう切れてるみたいだね」

「うん。だいぶムラがあったよ。眠くなったり、ならなかったり。効果が出始めるまでに時間もかかった。最近のミンソギヒョン…調子悪いね」

「…報告しとくよ」

俺は、階段を上がる。

「ねぇ、ギョンス」

レイヒョンが呼ぶから、俺は足を止める。

「俺は、チャニョルに希望を見たよ。ギョンスは、どう思う？」

…俺は、何も答えなかった。

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