桔梗を探して (ページ9)

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8.始まった生活ページ9

＜チャニョル＞

「あのー…その橋、いつ頃直るんですかね？」

「そうだな…さすがに外部に連絡して直してもらわなきゃなぁ…土木には詳しくないから分からないけど、しばらくは帰れないだろうね」

ミンソクさんはニコッとこちらに笑う。

…いや、笑えないですって。

「えー…どうしよう…まず会社に連絡しなきゃ…」

「かいしゃ？」

Aがまたポカンとした顔でミンソクさんを見る。

「会社はなぁ…Aには関係ないなぁ」

ミンソクさんはAの頭を撫でた。

会社も知らないのか…？彼女はどうやって育ったんだ…？

いや、Aのことを考えてる場合じゃない。

自分の心配をしなきゃ。

「電話貸してもらえませんか？」

「あぁ、いいよ。そこにあるから」

ミンソクさんは机の上の固定電話を指差す。

「ありがとうございます」

俺はスマホを取り出し…

「あれ」

スマホが、無い。

ここに来る時一緒に持ってきたっけ？

来る途中は、どうせ圏外だからって取り出さなかった。

キャッチボールするのに邪魔だから…

「…カバンの中だ」

そしてそのカバンはバーベキュー場に置いたまま。

…ことごとくついていない日のようだ。

「どうしたんだ？」

心配そうにミンソクさんがこちらを見る。

「えっと…電話できないです…」

「どうして？」

「番号覚えてなくて…」

今の時代、スマホに全て任せてるから…会社の連絡先なんて覚えていない。

「…あはは！とんだ災難だな！」

…だから笑ってる場合じゃないんですよミンソクさん。

「かわいそう…オッパ、しばらく泊めてあげようよ」

…やはりAは天使だ。

「うーん…そうだね。スホ、空き部屋あったかな？」

「うん、あるよ」

ミンソクさんとスホさんは対等な関係、という感じがするな。

「じゃあ、そこにしばらく泊まるといいよ」

「え、いいんですか！？ありがとうございます！」

こんな豪邸に泊めてもらえるなんて…

まぁ家に帰れないのはしょうがないとして…短いこの生活、せっかくなら堪能しよう！

いつものポジティブ精神で自分にそう言い聞かせた。

「あぁ、そろそろお昼ご飯の時間か。1人分増やせるかな…」

「ギョンスに聞いてみるよ…あぁ、みんなで食堂に行こうか」

「うん、そうだな。チャニョルさんも、一緒に行きましょう」

食堂…家なのに食堂かぁ…さすが豪邸…。