7.帰れない ページ8
＜チャニョル＞
「…チャニョルくん、だったね」
「はい、そうですけど…」
「どうやってここに来たの？」
柔らかく笑っているように見えて…どこか、この人には怖さを感じる。
「えっと…友達とバーベキューをしようと思ってこの近くに来たんですけど…キャッチボールをしてたらボールが林の中に飛んでっちゃって…それを探してて、気づいたらどこから来たのか分かんなくなって、雨も降ってきて…やっと明かりを見つけて、ここに来たんです」
俺は、ありのまま正直に話した。
…話してて、自分でもバカだな、と思った。
「バーベキューをしに…？」
「はい！」
「ね、ね、オッパ…ばーべきゅーってなに？」
Aがミンソクさんの服を摘んで小声で聞いている…こっちにも聞こえてるけど…かわいいな。
というかバーベキュー知らないのかな。
「んー？今度一緒にやろうな」
「ほんと！？」
Aは嬉しそうだ…さっきから思っていたけど、見た目の割に…精神年齢は幼いな。
「あぁ。…それで、道に迷った、と…おかしいな」
「え、何がですか？」
「この付近一帯は森だぞ。近くのバーベキュー場…10キロ以上は離れているはずだ」
「じ、10キロ、ですか！？」
「あぁ。だいぶ歩いたようだな」
…どうりで、足が痛い。言われて意識するとますます痛くなる。
「あの…ミンソギヒョンが呼んだんじゃないんですか…？」
ジョンインが恐る恐る、といった風に聞く。
「…あぁ。呼んでないぞ」
「そう、ですか…」
…なんだ、この違和感。
ミンソクさんって…何者…？
その時。
トントン
部屋をノックする音。
「失礼します」
1人の男が入ってきた。
「あぁ、スホ…どうした？」
スホ、と呼ばれた男は、チラッと俺の顔を見る。
「…誰だい、この人」
「バーベキューしてたら道に迷ったんだと」
「…はぁ、そうですか…あ、途中に、橋通りませんでした？」
スホさんは俺を見てそう言う。
橋…そういえば、通った気がする。
この家見つけて夢中で走って…その途中に、木の橋を通った気がするぞ。
「はい、そんな気がしますけど…」
「その橋、壊れたよ」
「え！？」
たしかに、古びた橋で…ギシギシ言ってた気がするけど！
「そうか…残念だったな、チャニョルくん。この館と外を繋ぐのは、その橋だけだ」
え、つまり何ですか。
「帰れないって、ことですか…？」
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作者名：LUKE | 作成日時：2020年7月24日 21時
