48.交渉成立 ページ49
＜チャニョル＞
「…何かの、縁なのかも」
セフンは前のめりになって俺を見た。
「ミンソギヒョンの因縁がたまたまやって来て、たまたまここに居座ることになって…しかも、Aをこんな穏やかな顔にさせて」
セフンは、笑っている。
「ベッキョニヒョン、決めたよ。俺もヒョンに乗る…チャニョルが、ヒョンに力を貸すならね」
セフンは俺の目を見たままそう言った。
ベッキョンの視線を感じる…。
「俺なんかが…」
「言ったろ。俺は藁にもすがる思いだ。…時間が無い」
ベッキョンが言う。
「時間って…何の？」
「ミンソギヒョンがAを誘拐してからもうすぐ15年…一般的に、時効が成立する。早くしないと、ミンソギヒョンを警察に突き出せなくなる」
「今すぐ、じゃ、だめなの？」
「色々問題がある…１つは、俺たちはミンソギヒョンの金で暮らしてるから…ここの外には居場所がないんだ。ここを出ても、外での生き方を、知らない…特に、人生のほぼ全てをここで過ごした俺なんかは」
セフンはそう言って下唇を噛む。
「…大丈夫。生き方なんて、それぞれだよ」
俺は、外の世界を知っている。
色んな生き方があるのを、知っている。
「生きてさえいれば、大丈夫。ここを、出よう」
俺がそう言うと、セフンは目を大きく開いた。
「…確かに。どんなに暗い所でも、人は生きてたよ、外の世界では」
ベッキョンはそう呟く。
そっか、ベッキョンはここに来て3年。外の世界での暮らしの方が、長いのか。
「…てことは、チャニョルはベッキョニヒョンに乗るってことだね」
「うん」
「…交渉成立だ」
セフンはニヤッと笑って、こっちに近づいて来た。
「よろしく…チャニョリヒョン」
「お、おう！」
笑顔で、手を差し出して来たセフン。
俺は迷うことなくその手を握った。
チャニョリヒョン、だって…！なんかすごい嬉しい…。
「交渉成立は良いことだ。けど、気をつけて！この家、盗み聞きが趣味の耳の良いうさぎさんがいるから！」
ベッキョンはわざとらしく大きな声でそう言った。
うさぎ…？
ドアがガチャ、と開いて…
「ベッキョン、お前こそ鼻のよく利く犬だな」
スホさんが、入ってきた。
「え…スホさん…どっから、聞いてたんですか…」
「さぁね。ここの3人が組むのか…ふぅん」
「スホヒョンは？入る？」
ベッキョンが聞く。
「…俺は、Aの味方しかしない」
そうとだけ言って、スホさんは去っていった。
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作者名：LUKE | 作成日時：2020年7月24日 21時
