46.救世主の顔 ページ47
＜ベッキョン＞
「…どういう状況、これ」
「…さぁね。ジョンインが見たら怒り狂いそう」
「ジョンイナは」
「さっき部屋覗いたら、寝てた。不貞寝じゃない？」
俺は、チャニョルと夜に話したことについてもう一度整理したくて部屋を訪れた。
でも扉を開けると、セフンが何やらベッドを見て立ち尽くしていて。
どうしたんだろうと思ってセフンの目線の先を見ると…
抱き合って眠る、Aとチャニョル。
…Aのこんな穏やかな顔、初めて見たかも。
「セフナは、何しに来たの」
「ベッキョニヒョンと昨夜何話してたのか気になって」
「俺もそれについての用だったんだけど」
「はぁ…」
セフンはため息をついて椅子に座る。
「…チャニョルはさ、ミンソギヒョンの因縁の相手なんだって」
セフンはチャニョルの方を見てそう言う。
俺はフードを取った。
「ミンソギヒョン、だから焦ってるらしい…この、だから、の部分は俺には分かんないけど」
「焦ってる？」
「Aに不妊治療をさせたいってさ」
「…今までずっと、セフナがピル調達して妊娠しないようにしてきたんだろ」
「うん」
「なんでそうしてた」
「…妊娠は、Aの体への負担が大きすぎる。たぶん、出産はちゃんとした病院に行かせられないだろう…Aは、ミンソギヒョンが誘拐してきた子だから。たぶん設備が整ってないここで産むことになる。最悪…Aは死ぬよ」
ガッ、と俺はセフンの胸ぐらを掴む。
「八つ当たりしないでよ」
「激しいセ ックスだってピルだって…Aの体への負担は大きいだろ…！」
「死ぬよりはマシでしょ」
セフンは俺が胸ぐらを掴んでいる手を握る。
「…俺たちは、この外に居場所がないの。ここで生き残るためにどうするか。それを考えるべきだと思うよ。レイヒョンやベッキョニヒョンみたいに、ミンソギヒョンに逆うんじゃなく」
俺はセフンから手を離す。
「…お前は大好きなAが抱けるんだから、ここに残る方がいいんだよな」
「…ベッキョニヒョンは、レイヒョンを知らないから反抗しようとするんだ。みんな…知ってるから、反抗しない」
苛立つ俺とは対照的に、セフンは冷静にそう言って立ち上がる。
「でも…状況、変わるかもね…これのお陰で」
そう言ったセフンの視線の先を見る。
「ふん…このアホ面が、救世主かよ」
チャニョルは半目気味で、口を大きく開けて寝ていた。
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作者名：LUKE | 作成日時：2020年7月24日 21時
