42.愛される苦悩 ページ43
＜スホ＞
「あーあ、行っちゃった…」
「行っちゃったって、何だよ。Aが行かせたんだろ」
「ジョンイナはスホが怖いんだよ！」
笑顔でそう言った後、
「…行こ、スホの部屋」
Aは途端に真顔になる。
「…とんだ二面相だな」
俺がそう言うと、Aは俯いて、歩き始めた。
俺の部屋に入ると、Aはベッドに座った。俺もAの隣に座る。
Aは、俺に体をもたれてくる。
「…どれが本当の自分か、分からなくなっちゃったな…」
ボソッと呟くA。
「レイのせいだろ」
「…レイを悪く言わないでよ」
Aは遠くを見ていた。
「無邪気な自分が、1番楽なの…作ってるわけじゃない。でも…賢くいなきゃって…でないと何も変えれない…」
たぶん、本音だろう。
俺は、Aの肩を抱き寄せる。
「いっそ、どっちかに決めたら？諦めて無邪気にこの家で生きるか、賢く欺いてこの家を出るか」
俺はAの背中を撫で、Aの顔を覗く。
…納得のいかなそうな顔だ。
「…悪い。なんて声をかければいいのか、分からない」
「…愛されなきゃ…」
Aの目から、涙が一粒流れ落ちた。
「ミンソギオッパは私に、愛される人になりなさいって言った…まるで、呪いのように…」
「A…」
「周りの期待に合わせてるうちに…本当に自分がしたいこと、分かんなくなった…」
Aの目から、涙がポタポタと流れ落ちる。
こんな顔…させたくないのに。
「ごめん、俺は…どうすればいい…」
困惑してしまい、何をしてあげればいいのか分からない。
Aを…助けたい。
その気持ちは、ずっとあった。
あの人が、Aの子どもが欲しい、と俺に打ち明けた3年前から…
いや、Aがここに連れてこられた、15年前から。
だけど…具体的にどうすればいいのか分からなくて…
知らない間にAはレイに感化されて…
ますます、こんなに苦しそうになった。
俺は、泣いているAにかける慰めの言葉すら、15年経っても分からない。
「…ごめん」
Aはそう呟いて俺の胸を軽く押した。
俺はAを抱き締めていた腕を解く。
「なんでAが謝るんだよ」
「…分かんない」
Aは涙を拭いて立ち上がる。
「…あの人が、不妊治療をAにしたいと言い出した。この家を出たいんなら…急げ」
俺のその言葉を聞いて、Aは部屋を出た。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 139人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：LUKE | 作成日時：2020年7月24日 21時
