34.些細な力 ページ35
＜チャニョル＞
あの写真に映っていたのは、10歳くらいの少女だった。
面影が…ある気がする。
それに、あの写真を見たの、初めてじゃない、気がするんだよな…。
そして、桔梗と、A。
「…母さん」
桔梗は俺の母親の好きな花、Aは母親と同じ名前。
ミンソクさんは、俺じゃなくて、俺の母親に因縁があるんじゃ…。
そしてA…10歳以前の記憶が、ないと言っていた。
あの写真の少女は、10歳くらいだった。
ゾクッ
背筋に寒気が走る。
「…あの写真…」
トントン
部屋のノック音。
こんな真夜中に、誰だろう。
ガチャ、と返事もしてないのに扉が開く。
「えっと…ベッキョン…？」
深くフードを被った、子犬みたいな顔をした男。
最初に玄関で話した程度だけど…。
「…話をしよう」
ベッキョンはそう言って、部屋の鍵を閉めた。
…また鍵を閉めたな。セフンといいベッキョンといい…そんなに聞かれたくない話なのか？
「な、なに…？」
ベッキョンは椅子にドカッと座る。
「あの写真、見覚えは？」
…あの写真って…少女の、Aの写真…？
あの写真、セフンに取られたはずだけど。
なんでベッキョンが知ってるんだ？セフンとベッキョンは…仲が良いのか？
「…俺、聞いてるんだけど」
ベッキョンは口を尖らせる…本当に掴めない男。
「…ちょうど、そのことを考えてたんだ」
「ふぅん。それはグッドタイミングだったねー。で、見覚えは？」
「思い出した…誘拐された子だ」
町中の、この子を探しています、のポスターに…あの写真が貼ってあった。
だから、見覚えがあったんだ。
「…そう」
ベッキョンはフードに手をかける。
「Aを、助けたい？」
ベッキョンはフードに手をかけたまま、俺の目を見てそう言った。
助けたい、か…。
「俺なんかが、力になるの…？」
「…Aが言ってた。リンゴは芯まで食べれるんだって」
ベッキョンが、フードを外す。
「時間がないんだ。どんな些細な力でも味方にしなきゃ、俺らはいよいよこの家に囚われたままだ」
ベッキョンの目は真っ直ぐだった。
俺の目を捉えて、離さない。
「…やっぱりこの家には、何か秘密があるの」
「薄々気付いてたんだね。…ただのバカじゃないんだ」
…失礼な奴。
「俺はビョンベッキョン。仲良くしよう、パクチャニョル」
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作者名：LUKE | 作成日時：2020年7月24日 21時
