31.不本意な中毒者 ページ32
＜ベッキョン＞
「ふわぁ…」
しまった。睡眠剤入れられてなくても、酒飲んだら眠くなっちゃって結局寝ちゃってた。
でもまぁ頭はいつもより冴えてる。昨日の朝ごはんに入ってた睡眠剤の分は、もう効き目が無くなってきたようだ。
時計を見ると、午前0時を回ったところ。
…今日は頭冴えてるし、ジョンイナの部屋、行ってやるか。
俺は部屋に残されたAのカーディガンを持って、ジョンインの部屋に向かった。
トントン
部屋をノックしても返事がない。
まぁいっか。
ドアを開けて部屋に入る。
「ジョンイナー」
「はぁ…はぁ…」
ジョンインは、ベッドに蹲って、苦しそうだった。
「これ、Aのカーディガン。少しは楽になる？」
そう言ってジョンインに渡すと、ジョンインはそれを抱き締めて、すうっ、とにおいをかいだ。
「…うん…ちょっと楽になった…ありがとうベッキョニヒョン」
「そう。良かった」
俺は近くの椅子に座る。
「…俺、おかしいよね。Aと離れただけでこんなんになるなんて…」
「うん。おかしいね。俺が外の世界で見てきた麻薬中毒者とおんなじ症状だよ」
俺はフードを取り、ジョンインの目を見た。
「ベッキョニヒョンって…ここに来る前何してたんだっけ…」
「お互いの過去についてあんま詮索しないのが暗黙の了解だろ…ま、俺は別にいいけど。麻薬の密売人だよ。捕まりそうになったところを逃げてきたの」
「そっか…」
「お前は、親殺したんだっけ？」
「…うん」
「ふーん。そう」
別に驚きはしない。
人が殺し、殺されるなんて、俺にとっては外の世界でも普通のことだった。
「ベッキョニヒョン…Aと、昼、何話してたの」
「ん？お前は知らなくていいよ」
俺は立ち上がった。
「…Aに変なことしないで」
「変なことって何？」
俺はフードを被り、ポケットに手を突っ込んだ。
「…その格好、ほんとに密売人みたい」
「だからそうだったんだって！」
俺はケタケタ笑うが、ジョンインは真顔だ。
「じゃーね」
俺も真顔になって、部屋を出た。
ジョンインは、敵ではない。
彼は利用されてるだけだ。
…可哀想に。Aと離れるとダメな、あんな体にさせられて。
俺は一度セフンの部屋の前に行き、耳をドアに当てる。
…しっかり抱いてんじゃん、セフン。
俺は耳を離して、自室に帰った。
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作者名：LUKE | 作成日時：2020年7月24日 21時
