桔梗を探して (ページ26)

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25.メアリーの部屋ページ26

＜スホ＞

…全く。何やってんだか。

『スホヒョンかぁ…部屋遠いけど…あの人案外悪趣味だからなぁ。聞いてるかもよ、ドアの向こうで』

お前の方が悪趣味だろ、ベッキョン。

わざと大きな声で言ってるだろ。

その癖、Aの声はあんまり聞こえないように…指でも入れてるのか。

ベッキョンの部屋の前を通りかかると、Aの喘ぎ声がした気がして。

嫌な予感がして、ベッキョンの扉に背中をもたれて立っていた。

案の定、ベッキョンはAを抱いていたらしい。

Aも気持ち良さそうな声出して…

今夜もセフナの相手しなきゃいけないのに。

みんなはバーベキューの準備をするだの言って騒がしく外に降りていっていた。

２階には俺と、Aとベッキョンしかいないことは確認済み。

しばらく扉の前に居座ってみる。

…喘ぎ声は止んだ。

終わったのか？

喘ぎ声が聞きたかったんじゃない。聞きたいのは、この先だ。

ベッキョンとAが、いつも2人で何を話してるのか…

俺は耳をそば立てる。

『もうお腹一杯なんだけどなー…Aもでしょ？』

『…バーベキューは別腹』

『あはは！そうだね～。ね、A。バーベキューと焼肉って、何が違うの？』

『バーベキューは調理してから食べる、焼肉は調理しながら食べるんだって…本来はね。今は中で食べるか外で食べるかの違いぐらいらしいよ』

『ふーん…A、どっちもやったことないでしょ？』

『うん。どっちも本で読んだだけ…ベッキョナ、”メアリーの部屋”って知ってる？』

俺はドアから耳を離した。

メアリーの部屋…哲学だな。

生まれてからモノクロの部屋で育ち、色を見たことのないメアリーという女性がいると仮定する。

しかし彼女は、モノクロのテレビを通し、色についての知識をたくさん教えられる。どういったときに人が”赤い”という言葉を使うのか、どのようなプロセスで人がその色を認識するのか…。

そんな彼女がそのモノクロの世界から初めて解き放たれて実際に色を見た時、彼女は何か新しい物を学ぶのか。

…難しく聞こえるが、簡単に言うと、経験は知識で代用できるのか、ということだ。

メアリーの想像と実際の色がかけ離れていれば、所詮机に向かって学ぶ勉強など、実際に経験することには及ばない、というのが証明される。

本当に、Aは賢いな。

たくさんの知識を本の中から一生懸命得て…

何を、しようとしてるんだ？

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