12.手の震え ページ13
＜ジョンイン＞
…くそ、手が震え始めた。
俺は皿洗いを終え…正確には残りを全てチャニョルに押し付け、Aを探す。
「A、どこ…」
「Aならベッキョニヒョンの部屋に入ってったよ」
「…セフン」
セフンは、みんなの部屋のドアが見える共同スペースのソファに座って本を読んでいた。
「また、ベッキョニヒョンの部屋…？」
俺は手を後ろに隠す。
「うん。何やってんだろうね、こそこそ2人で」
バン、と本を閉じるセフン。
「これ、Aが欲しいって言ってた本。渡してあげて」
セフンは調達係。週に一回街に出て買い物をするのを許されてる。
「うん、わかった、ありがとう」
本を受け取ろうとするが。
セフンは本を離そうとしない。
俺の手の震えで、本もガタガタ震えている。
俺はパッと手を離した。
「大丈夫？」
セフンは俺の目を見つめた。
「…Aが近くにいないと、こうなる…」
「それ、夜平気なの？」
「…平気なもんか。毎晩毎晩狂いそうだ」
Aは夜…いつも、誰かの部屋に行く。ミンソギヒョンの指示で。
「…ジョンイン、Aと離れること、少し慣れた方がいい」
「慣れるったって…俺だって震えたくて震えてるわけじゃない。勝手に…なるんだ…」
「…そうか。そうだよな」
セフンはもう一度、本をこちらに差し出してきた。
今度はちゃんと手を離してくれた。
ベッキョニヒョンの部屋に行ってみよう、と思ってその方向を見ると。
ちょうど、Aが出てくるところだった。
「A…」
俺は走って近寄り、Aに抱き着く。
「ちょっ、ジョンイナ！びっくりしたぁ！」
「…A、ベッキョニヒョンと何してたの」
「何って…心配だったの…ご飯食べてないから」
「そんなんいつものことだろ」
「そうだけど…」
離れていた分、ぎゅーっとAを抱き締める。
…安心する。
手の震えは止まった。
「…ふぅ、A、一緒に本読もう」
「うん、いいよ！あ、この本…」
「A、欲しがってたろ」
セフンがカツカツとこちらにやってくる。
「うん…ありがとう、セフナ！」
「どういたしまして」
セフンはAに向かって微笑む。
「…そんなに睨むなよ、ジョンイン」
…俺、睨んでたのか。
「A、今夜も俺だって」
「うん、オッパに聞いた！」
…そんな純粋な笑顔は、俺だけに向けてくれ。
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作者名：LUKE | 作成日時：2020年7月24日 21時
