10.2人だけの会議 ページ11
＜ベッキョン＞
トントン
ベッドで寝ていると、ノック音がした。
俺はそのまま寝続ける。
キーッと扉の開く音がして、誰かの気配がした…見なくても分かるけど。
「ベッキョナ。起きて」
「…ちゅーしてくれたら起きる」
「しないよ」
「…しろよ。嫌いになるぞ」
「もぅ…」
唇に、柔らかい感触。
嫌いになるぞ、は魔法の言葉だ。
俺はそっと目を開けた。
「…A」
ベッドのへりに座って俺の顔を見下ろしているA。
俺は上半身を起こし、被っていたフードを外した。
「これ、食べて」
差し出してきたのは、リンゴ一個丸々。
「これ、安全？」
「うん、大丈夫」
「ありがと」
「お腹空かない？大丈夫？」
「うーん、あんまり」
りんごに齧り付き、噛むとしゃくしゃく音がする。新鮮で甘い。
「そう…なら良かった」
「ジョンイナは？」
「今は皿洗い当番だから」
「そっか」
アイツ、Aのこと好きすぎてなかなか離れようとしないから困る。
「Aはさ、チャニョル…本当に、道に迷っただけだと思う？」
「うん。そうみたいだよ」
「…ってことはさ、ただのバカなの？」
「あんまり人のことバカって言わないの」
「重要だよ。俺らの味方になってくれるかな」
リンゴ…芯だけになっちゃった。
「外との繋がりができるのは大きいよ」
「それだけ？」
俺がそう言うと、Aは俺から芯を取り上げる。
「…リンゴってね、芯まで食べれるんだって」
そう言って、俺の食べ残した芯を食べ始めた。
「シアン化水素っていう毒性の物質も含まれてるけど…それはリンゴをトン単位で食べて初めて体に害を及ぼすのよ」
…どこからその知識を手に入れるんだろう、こんな、閉鎖された空間で。
「多少毒があっても大丈夫。捨ててる暇は…無いの」
Aはついに芯を全て食べ切った。
「…A、お互いバカなふりするのも大変だね」
俺はAを抱き寄せる。
「んー、バカなふりしてるつもりは無いよ。頭を空っぽにするのって…楽よ」
Aは自分の掌を見つめる。
「そう」
俺はAのほっぺたにキスをする。
「なに」
「んー？ポッポ！」
Aは俺をジトッと睨む。
「頭空っぽにしたら、Aにちゅーしたくなったからさ〜」
「…ベッキョナ…」
「その顔、見せちゃダメだよ、みんなには」
「…分かってるよ」
Aは俺の腕からするりと抜け出し、部屋を出て行った。
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作者名：LUKE | 作成日時：2020年7月24日 21時
