154.知らぬが仏 ページ6
＜チャニョル＞
Aちゃん、怖い。
まったく…昔から人の感情に敏感なんだから…。
どうしよう…言うべきか…？
元々、セフンは人の嫌がることが理解できない子で。
セフンとAちゃんが記憶を無くす前は、それでかなり大変だった。
ただ、学習能力は高いから、言うことはちゃんと聞く。
だから、セフンが記憶を無くしてからは徹底的に人にやってはいけないことを教えて、今の優しい優しいセフンになったわけだけど。
でも、Aちゃんが絡むのは初めてだったから…Aちゃんで嫉妬して人を噛むのはダメだ、なんて教える機会無かったもんな…。
でも、そんなセフンのこれまでを教えたら、Aちゃんは気付いてしまうんじゃないか…
セフンの実の父親は、ベッキョンだってこと…。
元々、本当にそっくりな性格だったわけだけど。
…それを知って、どうなる？
言ったところで…何が、変わる？
知らぬが仏、という言葉もある。
ジョンインとセフンが血が繋がってないとしても…彼らは、紛れもなく親子だし。
言う必要…あるのか…？
「チャニョル…ごめん。そんな思い悩むことなの…？」
「あー…うん、まぁ…」
Aちゃんの腕に抱かれるセフンに目をやる。
さっきので落ち込んでいるのか、大人しくしていて、きゅっとAちゃんのシャツを掴んでいる。
「そっか…ならいいよ、大丈夫」
そう言ってくれるAちゃん。
「うん、ありがとう…」
そして、何よりこの問題において1番大きいのは…
ベッキョン自身が、それを知らないということだ。
セフンは完全にジョンインとAちゃんの子だと思っている。
尤も、言うわけにはいかなかった。
それを理由に、Aちゃんと一緒にさせろと言い出すだろうから。
そうこう考えているうちに、家に着いた。
「あ…あっぱ…！」
セフンの目線の先には、部屋のベランダからこちらを見るジョンインの姿。
「遅くなって、心配させちゃったかな…」
「あっぱー！！」
「ちょ、セフン、声おっきいって…」
セフンはジョンインを見て元気を取り戻したのか、ジョンインに向かって手を振る。
ジョンインも軽く振ってから、部屋に戻って行った。
「はやく、かえろ…あっぱが待ってる…」
「うん、そうだね、セフナ」
よしよし、とセフンを撫でるAちゃん。
…うん。セフンのあっぱはジョンインで、おんまはAちゃんだ。
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作者名：LUKE | 作成日時：2020年12月3日 2時
