181.親友の決断 ページ33
＜チャニョル＞
『チャニョル…俺、アメリカに行く』
急にベッキョンから電話が来たかと思えば、開口一番。
もしもし、よりも先に、その言葉が聞こえた。
「は…アメリカ…？」
『うん。アメリカ』
「旅行に行くの？」
『ううん、移住する』
「…へ？」
『永住はするつもりないけど、しばらくはアメリカに住む』
「…アメリカって…America？」
『うん。そう。それ』
「なんで、そんな、急に…」
あまりにも急転直下な報告に、頭が真っ白になる。
『作曲の勉強を、アメリカでしないかってお誘いがあったんだ。それに…そんだけ離れれば、さ。Aのこと…諦められるかと思って』
「ベッキョン、お前…」
あんなに未練タラタラ、Aちゃん大好き、愛してる、愛しすぎて狂っちゃう、って言うような男が…。
『…言ったろ。俺には…Aとの未来なんて、もう無いんだよ』
『俺に…そんな未来は、無いのにね。Aと俺の子どもなんて、一生見れるはず、ないのにね』
前ベッキョンの家に行った時、自嘲するように彼が言った言葉…。
『分かってるんだよ、そんなの…もう、辛いんだ。分かりきってることを、何度も何度も思い返してしまうんだ、Aと多くの時間を過ごした、この部屋にいると…そんな時に、知り合いから、アメリカで作曲の勉強しないかって、連絡が来て。いいかもなって、思ってさ』
「ベク…」
ベッキョンは、ベッキョンなりに…たくさん考えて、悩んで、苦しんでいたんだ…何が、最善なのか…。
『ってわけだから。もう1ヶ月後にはアメリカだから』
淡々と言うベッキョン。
「は！？1ヶ月！？」
『うん。…もう、早くこの部屋を出たい。手続きは誘ってくれた知り合いが手伝ってくれるし、家も空きがあるらしくてすんなりいけば』
「…そう…」
ベッキョンの口調は、もう覚悟が決まっている感じで。
今更何を言っても、無駄って感じがしたけど。
「それ…Aちゃんには、言うの…？」
『言って、何になるの？』
「え、いや、まぁ…でも一応、1週間に1回Aちゃんと会うって話になったんじゃ…」
『あー…』
ベッキョンは、少し考えるような間があって。
『じゃあ、もし今週末本当に会えるなら、その時に軽く話すよ。それでバイバイする、Aと』
「え…もう、会わないってこと…？」
『じゃなきゃなんのためにアメリカまで行くんだよ』
「いや、でも…」
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作者名：LUKE | 作成日時：2020年12月3日 2時
