アムネシアを枯らすな 4 (ページ30)

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178.フラッシュバックページ30

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「おはよう、ございます…」

現時刻、10時半。

9時が始業時刻である会社からすると、1時間半の大遅刻で。

恐る恐る、懐かしの職場に入る。

私が入ると、少しざわつくオフィス。

「あ、Aちゃん…こっちおいで。みんな、ちょっと良いかな」

私に気づいたミンソクさんに手招きされ、みんなもこちらを向く。

「今日から仕事に復帰する、キムAさんだよ」

そう言ってこちらを見るミンソクさん。

「あ…キムAです、よろしくお願いします…」

キムジョンインと結婚してるのだから、私も苗字がキムなわけだけど、なんだか慣れない響きに戸惑うな。

パチパチと、みんなは拍手で迎えてくれる。

「彼女はちょっと…記憶に障害があって。少しずつ仕事を覚え直してもらうから、みんなも困ってたら助けてあげてね。以上。じゃあ、仕事に戻って」

止めていた手を動かし始める社員たち。

…だめだ、みんなの顔を見てるけど…誰1人として、思い出せないな。

「Aちゃん、席、ここだよ。働いてた頃のままにしてるから」

ミンソクさんに指されたデスクを見る。

「わぁ…」

なんとなく…なんとなく、だけど、見覚えがある気もする。

ポン、と机の上に置いてあったファイルを開いてみる。

1番新しそうな書類…数年前の日付になってる。

こんな仕事…してたんだっけ。

入社1年目でセフンを出産して、数年後に2人目の子を出産して、子育てをしながら、家計を支えるために仕事もして。

大変…だったんだろうな…

『Aちゃん…仕事中ごめん、セフンが、Aちゃんを恋しがって泣き喚いちゃってて…ちょっと手が付けれそうにないんだよね…』

「…え？」

今のは…チャニョルの、声…？

突然、パッと頭の中に浮かんできた場面に困惑してしまう。

いつ言われた、もの…？

戸惑いつつファイルをさらに捲ると、破れたページ…

『おんま、紙とにらめっこしないで！！僕とあそぼ！！』

『こらセフナ引っ張らないの！…あー、破れちゃった…』

…これ、は…

「ん、Aちゃん、大丈夫？」

「え？あ…はい…」

心配そうに顔を覗かれて、慌ててファイルを閉じる。

さっきのは…もしかして、過去の記憶なんだろうか。

この前、セフンとハンバーグを作っていた時も、記憶がフラッシュバックしてきたし…

私の記憶は、戻る可能性が、ある…？

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