175.最低な人たち ページ27
＜ジョンイン＞
「俺、本気だったから」
「何？最後に、良い人で終わらせたいってこと？」
確かに、はたから見れば、そう思われるのが普通だろう。みっともないって。
でも。
「…そうじゃないって、分かるだろ、お前なら」
お前は、俺のことを本気で好きでいてくれたし。
俺も、数多い女の中で、再婚を考えるほど本気になれたのは、彼女1人だけだった。
お互いちゃんと好きだったから、言わなくても、分かるだろう…でも。
「…ただの気休めなんかじゃ、」
「変に慰めようとしないで」
やっと、彼女の顔は歪んだ。
「嫌な記憶のまま、終わりたいの」
そう言った彼女は…間違いなく強い人だ。
「あーうざい男だった！って。変に未練持ちたくないもの」
俺は、そんな彼女が羨ましかった。
女手1人で、立派にテミンを育て上げている。
「はぁーっ！」
彼女は深くため息をついて俺の手を振り切り、くしゃっと自分の髪をかいた。
「…母親って、楽じゃないの。知ってる？」
彼女は顔を歪めたまま、戸惑っているAを見る。
「それなのに…急に母親になれ、なんて、そんな酷いことを言う奴よ、コイツは！最低よ！！」
彼女はそう言って、Aの肩を掴んだ。
Aは呆気に取られている…俺もだ。
「…こんな最低な奴でいいわけ？」
テミンの母親はそう言って、Aの顔を覗く。
俺は、固唾を飲んでそれを見る…
「…私は実の夫と子どもがいながら、それを忘れて他の男と付き合って、しかも結婚までしようとしてたくらい最低な奴なので、私にはぴったりだと思います」
Aはそう言ってテミンの母親に微笑んだ。
テミンの母親は一瞬びっくりした顔をして…フッと、笑った。
「そう…私も、奥さんがいると知っていながら略奪婚しようとしてたわけだから、最低な奴なの！最低同士、仲良くできそうね」
彼女はそう言って微笑んで、Aから離れる。
「…母親の先輩として、分からないことは教えてあげるわ。なんかあったら頼って」
「わ…分かりました！ありがとうございます！」
Aはテミンの母親に礼をする。
「…ジョンイナ」
今度は、彼女は俺の方を見る。
「変わったわね。はっきり言わないあなたが好きだったのに」
「…お前は変わらないな。強いままだな」
「…やっぱりあんたのことは嫌いよ」
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作者名：LUKE | 作成日時：2020年12月3日 2時
