アムネシアを枯らすな 4 (ページ19)

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167.希望を共有すればページ19

＜ベッキョン＞

チャニョルは、明日も仕事だから遅くなる前に帰る、と言って、居なくなってしまって。

ぼーっと、チャニョルが持ってきてくれたタッパーを見つめる。

ころんとした、1つだけ形が歪で小さなハンバーグ。

きっと、あのセフンって子が作ったんだろう。

それを手に取って、眺める。

…本当は、分かっているだろ、と。

『俺に…そんな未来は、無いのにね。Aと俺の子どもなんて、一生見れるはず、ないのにね』

さっきチャニョルの前で言ったそれは、自分の口から勝手に出た言葉で。

今思い返されて、ずっしり来る。

本当は、心の底では分かっているんだ、と。

どれだけ渇望しようと手に入れられないものはある。

俺にとって、Aとの未来なんて…。

パクリ、とその小さくて歪なハンバーグを口にした。

それは、Aが作った形の整ったハンバーグと、同じ味がした。

近くにあったAのニットを引き寄せて、顔を埋める。

…何も匂いを感じない。

一緒にいすぎて、俺と同じ匂いになったから。

ニットから顔を離して、ふと、閉めっぱなしのカーテンに目をやる。

『うん…私が、言わなくても…ベクは、私の、ほしい、ものを…私の全てを、受け入れてくれて…』

希望なんて、俺に見せないでくれよ。

俺には眩しすぎて目がくらんで…冷静な判断ができなくなる。

そうして俺はAを何度でも傷つけてしまうんだ。

「…はぁ…」

Aが事故に遭ってジョンインやセフンたちの記憶を無くした時。

ジョンインくんから電話があって。

『…Aが、会いたがってます。事故で記憶がこんがらがっているみたいで、あなたのことを恋人だと思ってます』

その、絶望したような声に…

俺は、希望を持った。

誰かの絶望は、誰かの希望かもしれない。

俺がAを失って、彼がAを取り戻したように。

…希望を共有できれば、みんなが幸せなハッピーエンドになるはずなのにな。

…だめだ、永遠に考えちゃう。

よろよろと立ち上がり、寝室に向かう。

ベッドに倒れるように横になると…

ベッドの上に投げていたスマホが目の前にあって、画面が光った。

新着メッセージ…

なんだ、仕事のメールかよ。

俺は、スマホの電源を切ろうとして…そこにあった内容を見て…やめた。

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