164.正多面体 ページ16
.
「落ち着いて聞いて。セフンは…Aと、あの…ベッキョンの子、なんだ」
「え…」
セフンが…私と、ベッキョンの、子…！？
「ま…待ってよ、ジョンイナ…どういうこと…？」
私が混乱していると、ジョンインは下唇を噛んで俯いた。
そして、私が忘れていたことについて、一部、話してくれた。
「ベッキョンと別れて…俺と付き合うってなってすぐのことだった。Aが、妊娠してることがわかって。その時、俺とは関係を持っていなかったから…お腹の子は、俺の子じゃないと、断言できた」
ジョンインは、絞り出すように話した。
「でも、お腹の子に罪は無い。そう思って…俺は、お腹の子を…セフンを、我が子だと思って育てることに決めた。
でも…そう、甘くなかったんだ。セフンは、ベッキョンによく似てたよ。
人の嫌がることが分からなくて、友達を傷つけて…その度に、俺とAは謝りに行った。
正直…大変、だった。嫌な言葉も浴びせられた。そんな中で…俺は…限界が、来て…」
ジョンインは、ぐにゃっと顔を歪めた。
「嫌がるAを無視して、俺と血の繋がった子どもがほしいって言って…。結局、2人目ができて…でも、それで金銭的に余裕が無くなって、俺は仕事しなきゃってピリピリしてAに当たるし、2人の子育ても任せっきりで… その頃、俺たちは完全に、精神的に疲弊してた」
当時を思い出したのか、ジョンインは悔しそうにぐしゃっと髪を握った。
「それで、Aは鬱になった。そんな精神状態の中で、俺はAにセフンともう1人の子を保育園に送らせて…その途中で…」
ジョンインは、ゆっくりと顔を上げて、真っ赤な目で私の目を見る。
「俺は、お前を散々苦しめた最低な男だ。嫌いになっただろ。裏切ってごめんな」
そう、自分を嘲るように笑った。
…情報量が、多すぎて、頭がついていけないけど…
「…ジョンイナ。私ね、人間ってね、正多面体だと思ってるの」
「へ…？」
「その人について、自分の知ってる面と知らない面があって。多くの人は、自分の知らない嫌な一面を知った時、裏切られたと思うけど…その人自身が変わったわけじゃないし、元々知っていた面も、変わらずにあるの」
私は、変に冷静だった。
「大丈夫。裏切られたなんて思ってない。確かにそういう面もあったのかもしれないけど…私は…ジョンイナの優しい面を知ってる。どれだけ罪悪感に苛まれてきたのかも」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 148人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「K-POP」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：LUKE | 作成日時：2020年12月3日 2時
