アムネシアを枯らすな 4 (ページ14)

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162.無い未来ページ14

＜チャニョル＞

ハンバーグを口にしたベッキョンは、最高に幸せそうな顔をする。

この部屋を見た時は、ちょっと…いや、けっこう気持ち悪い、なんて思ったけど…こんな幸せそうな顔を見たら、言えないんだよな。

「…ん、でもなんかこっちのハンバーグ、形がいびつ…Aの作ったものじゃない…？」

…やっぱり、気持ち悪いぞ。

なんで分かるんだよ…。

「…誰が作ったの、これ。Aのじゃないなら、俺食べれない」

「いや、ベッキョ、」

「小さいってことは…あの、子ども…？」

…だからなんで分かるんだよ、って！！

「べ、ベッキョン、こっちのポテトサラダも美味しいぞ～？」

「…こっちは、Aが一人で作ったやつ？」

「ベッキョン…変なこと気にするなよ…」

「する！あの子どもが手伝ったんなら…A要素が減る！！」

…いや、その子どもには、お前の血が…

なんて…本人には、絶対に、言っちゃいけない。

「…セフンが手伝ってたのはハンバーグだけっぽかったから」

「…やっぱこれ、あの子どもの…」

はぁ、とベッキョンはため息をついて、タッパーから離れた。

「…いいな」

そう、ベッキョンはポツリと呟く。

「セフンがいなかったら…Aは、俺とジョンインくんの、どっちの側にいたんだろう」

…そんなの…

「もしもの話なんて、意味無いぞ」

そんなの、明確な答えなんてないし。

「…そう、だけどさ」

ベッキョンは力無く、ぼーっと天井を見上げる。

「もし…俺とAの間に子どもがいたら…Aは、俺の側にいてくれたのかな、とか…俺とAの子って、どんな感じだったのかな、とか、ついつい考えるんだ…」

ベッキョンは、自分を嘲けるように笑った。

「バカだよな。バカだと思う。でも…それでさ、なんとか自分を保ってるんだ」

そんなこと言われても…俺には、どうすればいいのか、分からないよ。

「そうだ、夢を見たんだ。あの日だ。チャニョルがさ、来てくれて…俺が、Aに結婚しようって、事前プロポーズした日。酔っ払って寝ちゃった時に見た…Aと結婚して、子どもがいて…幸せな夢。俺、すごい、その子のこと、大切にしてた…」

ポロッと、ベッキョンの目から涙が溢れる。

「俺に…そんな未来は、無いのにね。Aと俺の子どもなんて、一生見れるはず、ないのにね」

それを聞いて…俺は、どうしようもなく、胸がきゅっとなった。

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