161.味のしないガム ページ13
＜ベッキョン＞
チャニャルからの電話が切れ、ふとそのままスマホのホーム画面を見ると、火曜日の夜9時、となっていて。
…あれから…Aに会ってから、３日、か…。
会って、別れた直後は、楽しく話せたことと1週間に1回会うことを約束できたことが嬉しくて舞い上がって。
しばらくは、土曜日のことを思い出して、生きる活力が湧いてたんだけど。
もう、それは噛みすぎて味のしなくなったガムのようになってしまった。
…もう、会いたい。
1週間に1回じゃ無理だよ…。
Aは、本当に…俺にとって、大切な大切なエネルギー源だったんだと、身に染みて感じる。
何もする気が起きなくて、今日は１日ぼーっとしていた。
ピンポーン
インターホンが鳴って、のそのそと玄関に向かう。
ガチャ
「あ、チャニョラー」
「…あ、チャニョラー、じゃねぇよ…どうしたんだよ、ベッキョナ…」
呆れた顔で俺を見るチャニョル。
「とりあえず中入るぞ」
「うん、どーぞ」
チャニョルは、お邪魔します、といいつつ靴を脱いで部屋に入って…絶句。
「…ほんとお前…」
まぁ…そっか。
リビングに、Aの服とか化粧品とか本とか…とにかく所持品を、ぶちまけてるんだもん。
「はぁ…」
チャニョルはため息をつきつつ、ソファの上にあった服を退けて、机の上にスペースを作って。
持ってきたものをドン、と置いた。
「…なに、それ」
「Aちゃんの手料理」
「…は！？！？」
慌てて駆け寄ると、それはタッパーで。
開けると、中には美味しそうな料理が入っていた。
「…すごい…」
「ベッキョン、喜ぶと思って。Aちゃんは俺にって言ってたけど、お前にやるよ」
「っ、チャニョラっ…！！」
「うおっ！！ちょ、抱き着くなよ、お前風呂入ってないだろ！！」
なんて言いながらも、思わず抱き着いた俺の背中をトントンと優しく叩いてくれるチャニョル…本当に、最高の親友だ。
「ありがと…ありがと…」
「あーあー、泣くなよ…鼻水も出てるし…せっかくの男前が台無しだぞ〜？」
チャニョルはティッシュを取って渡してくれた。
「はやく食べて、元気出せよ」
「うんっ…！」
俺はタッパーに入ったハンバーグを、１つ口に放り込んだ。
「おいしい…Aの味だ…」
懐かしさに身体が痺れると同時に、元気が湧いてくる感じした…これこれ。
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作者名：LUKE | 作成日時：2020年12月3日 2時
