アムネシアを枯らすな 3 (ページ6)

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105.初めはどこからページ6

＜ジョンイン＞

昼休憩になり、いつものようにギョンスヒョンとご飯を食べる。

「今朝は大変だったな」

「まぁ…」

朝、保育園の前でガタガタして…結局、ちゃんと遅刻した。

今週2回目で、部長にも遠回しなものの、グチグチ言われ、朝から結構メンタルに来たけど。

今日は…Aの作ったお弁当。

それを食べるだけで、疲れなんて吹っ飛ぶような感じがする。

「どうなの、Aちゃんとは上手くやれてる？」

「はい、まぁ…今朝、一緒にセフンを保育園まで送ったんですよ」

「へぇ！セフンくん、嬉しかっただろうね…」

「はい、喜んでくれてました」

「それは良かった…ちょっと、心配してたんだ。俺が勝手に、Aちゃんが本当の母親だって伝えちゃったから、セフンくん混乱してないかなって」

「あぁ…いや、大丈夫です。むしろ、ありがとうございました」

「うん…”僕のオンマになってくれないの”って、泣きながらセフンくんが言っててさ…それを見てたら、耐えられなくなっちゃって」

「そう、だったんですか…」

セフンはずっと母親を欲しがってた。

俺が女を連れてくる度に、この人が僕のおんまなのかって、いつも聞いてきて。

…寂しい思い、させたよな。

「久しぶりにAちゃんに会ったけど、変わってなかった気がするよ。記憶が無くなってても、きっとまたやり直せるよ」

「…そう、ですよね」

やり直す。

この言葉、この1週間でどれだけ使っただろう。

やり直す…改めて、初めからすること。

初め、って、一体どこなんだろう。

一体…

♪～

着信の音で、ハッとする。

「ジョンインのじゃないか？」

ギョンスヒョンに言われてスマホを見ると…

「出ないのか？」

画面を見たまま戸惑う俺を見兼ねて、ギョンスヒョンが俺の顔を覗く。

「…ちょっと、出てきます」

俺はそう言って、スマホを耳に当てながら席を立った。

「もしもし。何の用」

『久しぶり。最近連絡無いから心配してたの』

電話の相手は、甘ったるい声の女。

「…悪い。もう連絡しな、」

『あの女、誰』

電話口からは、急に冷たい声が聞こえてきた。

「あの女…」

まさか。

『今朝、恥ずかしげもなく保育園の前でキスしてた女よ。気になって声を掛けたの。セフンくんの母親だって言ってたわ』

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