アムネシアを枯らすな 3 (ページ46)

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145.好きな自分ページ46

＜ジョンイン＞

『…すいません、畳むの下手で』

『ううん、これくらい大丈夫だよ』

Aは笑顔でそう言って、綺麗に畳み終わったエプロンを眺めた。

『綺麗だよね、ジョンインくんのエプロン…』

『…俺が、ちゃんと働いてないってことですか』

『なんでそうなるの！違うよ。ジョンインくんってさ、案外繊細でしょ！』

『え…？』

『仕事が丁寧なのよね。私なんて、たまに急いでコーヒー注いじゃってエプロンにはねちゃったりさ』

えへへ、と笑うA。

俺は…そういう、しっかりしているように見えて抜けてる所があるのも、いいなって…思っていた、わけだが。

『雑に見えて、実は丁寧なのよね～ジョンインくん…』

『…雑に、見えてたんですね』

『あ、いや、そういう意味じゃ…えへへ…』

また、抜けてる所を見せてくれたA。

距離が縮まるのが分かって、嬉しかった。

俺の中の、好きっていう気持ちも、どんどん大きくなった。

そして…不思議なんだ。

この人といると…自分が、好きになれた。

『…ありがとうございます』

『ん？』

『Aさんのおかげで…俺、自分のこと、ちょっとだけ好きになれます』

『な…何言ってんの！すっごく素敵な人だよ、ジョンインくんは！もっと自信持って！』

バシッと強く俺を叩いたA。

『いてっ…』

…本当に、強い人だよ、あなたは。

『あ、ごめん…強すぎた…？』

それでいて…あなたも、繊細なんだ。

「Aは…俺が…守る…」

「ん？」

「守りたいんだ。だから、強くないと」

俺の腹筋に添えられたAの手に、自分の手を重ねる。

「ふふっ…十分強いよ」

「いや…」

「ジョンイナに、私が記憶喪失だって明かされた頃…ジョンイナが泣くたびに、そう思ったの」

「え…」

「それだけ、今まで一人でたくさんのものを抱えてきたんだって…思ったから」

顔を上げると、Aの優しい微笑みがあった。

「大丈夫。これ以上強くあろうとしないでいいよ。キャパオーバーして…壊れちゃう」

…あぁ。

「…好きだ」

Aを、ぎゅっと抱きしめる。

優しく、優しく。俺の持ってる限りの優しさを以って。

「好き…本当に、A、愛してる…」

「…うん、知ってる」

ちゅっ、と…Aの方から、キスをしてくれて。

「私も大好きだよ、ジョンイナ」

そう微笑まれれば、悩みも、疲れも、吹っ飛んだ。

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