アムネシアを枯らすな 3 (ページ30)

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129.繰り返さないページ30

＜ジョンイン＞

「…はぁ…」

過去っていうのは、いつまでもどこに行ってもピッタリと自分に付いてくる、影のような存在だ。

思い出したくないことを思い出しては、傷ついて。

自分で自分を苦しめる。

あの後、何もかもどうでもよくなって…とても、生きた心地がしなかったな…

もう二度と、俺…たちは、同じ過ちを繰り返さない。

持ってきていたバッグから、ゴソゴソと封筒を取り出す。

時計を見る…そろそろだ。

封筒だけ持って車を降り、カフェまでの15分ほどの道のりを歩く。

…懐かしい。カフェにバイトに来ていた頃を思い出す。

今日はAと同じシフトだって分かってると…ちょっと早歩きになる自分に気づいた時は、笑ったな。

あんなにも自分が浮き足立つことがあるなんて、って。

俺の知らない俺に、Aは気づかせてくれたんだ。

少し早歩きで、カフェに向かう。

なんだろう、その頃を思い出して、ちょっとウキウキしてるのかな、なんて。

…でも。

俺は知ってる。良いことと悪いことは交互にやってくるって。

カフェに近づいて、そっとテラス席を見る。

…楽し、そうじゃん、

Aと、ベッキョン。

俺は、どんな光景を思い浮かべていた？

ベッキョンは俯いて死んだような顔をして。Aはしきりに時計を確認しつつそわそわと周りを見回して、俺の姿を探す。

そんな光景を、思い浮かべていたんだろうな、無意識に。

2人は仲良さそうに顔を合わせて、笑ってる。

…あの旅館のビュッフェを思い出す。

どうでも、いい？

…いや、今回は、そんなこと思わないからな。

思ってしまったら…俺は、何も学んでないことになる。

俺はアイツと違って学習能力が低いんだ…あぁ、またコンプレックスを…

「…A。時間」

俺の脚は、自然と2人に近づいていて。

口が、そう勝手に動いた。

「あっ、ジョンイン…そう、ね」

Aも時計を確認して、徐に立ち上がる。

「…今日は、ありがとうございました」

ベッキョンは、少し寂しそうな顔をしつつ。口角を上げて、俺にそう言った。

「…はい。失礼します」

俺は、パンッ、と封筒をテーブルに叩きつけて、びっくりするベッキョンを尻目に、Aの手を握って歩き出した。

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