アムネシアを枯らすな 3 (ページ20)

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119.メニュー表を閉じてページ20

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私が降りると、ジョンインはすぐに車を出発させて、ギリギリここから見えるくらいの駐車可能エリアで止まった。

それを確認して、カフェのテラス席を見る。

…いた。

背中しか見えないけど、あのシルエットは、絶対。

何より、彼以外にテラス席には人がいない。

何越しでもなく、直接会うのは久しぶりで…少し、緊張する。

1週間前までは、毎日、なんなら毎時間会ってたはずなのに。

恐る恐るカフェに足を踏み入れる。

「あ…A…」

近づいたのを察したのか…ベッキョンは顔を上げて、パッと立ち上がり、優しく微笑んだ。

ズキッと、胸が痛む…なんだ、これ。

「久しぶり…」

とりあえず、そう言ってみると。

「…あはは…」

ベッキョンは、複雑そうに笑った。

「座ろうよ」

ベッキョンに促され、向かい合わせに座る。

「さ、食べよ！何にする？」

ベッキョンは、無理矢理にでも笑顔でいるつもりだ。

…なんだろう、胸が圧迫される感覚。

「んー、全部美味しそう！A、どれがいいー？」

ベッキョンはメニュー表をこちら側に向けてきて、私の顔を覗く。

「…もしかして、寝起き？」

俯く私を覗き込むベッキョンと目が合う。

「…うん」

「そっか…A、寝起きはあんまり食べれないよね…せめて、スープでも飲まない？あ、コーンスープあるよ！どう？」

にこにこと笑いながらページをめくるベッキョンに。

「…A…？」

私は、メニュー表をパタンと閉じさせた。

「どう、したの…？」

ベッキョンは目をまん丸にして私を見る。

「…無理に、笑わないでよ」

そう言うと…ベッキョンの顔は歪む。

「…笑わせてよ。せっかく、ちゃんとAに会えたんだから。俺、嬉しいんだよ」

少し眉を下げて、困ったようにベッキョンは笑う。

…無理してる感じ、するんだけどな。

「相変わらず、お人好しだね、Aは。俺のこと、クズ！ゴミ！人間以下！って、罵ってもいいのに」

私は、何も言えない。

「…すっぱり、俺のこと、嫌ってくれれば…もうちょっと、諦めようがあったかもしれないのに。

なんで、あんなこと言っちゃうんだよ。俺は、Aの全てを受け入れてくれた、って」

『うん…私が、言わなくても…ベクは、私の、ほしい、ものを…

私の全てを、受け入れてくれて…』

指輪をベッキョンが持ってきた時、口にしてしまった言葉を思い出す。

…なんで、って？

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