アムネシアを枯らすな 3 (ページ17)

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116.お金なんてページ17

＜ジョンイン＞

スマホを投げて、だらしなくソファに身を預ける。

子どもを育てるのに、1年間に掛かる費用。

1人につき、100万円。

2人いたから…200万円。

愛さえあればお金なんて、などという理想論で乗り切られるほどの問題じゃないことは、2人目の子ができる前から分かっていたはずなのに。

…お金、なんて。

カバンから財布を取り出し、その中にいつも入れている写真を見つめる。

家族、4人の、写真だ。

「…ごめんな…」

お金じゃ、どうにもならないことなんか、世の中にいくらでもある。

やり直す？

もう、この4人の家族は、どうやっても戻って来ないんだぞ？

1番小さい子…Aが抱えている子を、じっと見つめる。

俺の子、なのに…

俺が殺したも、同然だ。

『ったく…ふわぁ…朝っぱらから勘弁してくれよ…じゃあな、ちゃんとセフンたちは送れよ』

あの日、酷く疲れてるはずのAを、保育園まで車で送らせて…

そのまま、3人は、事故に。

思い出しては、死ぬほど罪悪感が込み上げてくる。

「あぁっ…!!!」

そうだ、俺はもっと苦しむべきだ。

Aが戻ってきて、セフンはAが本当の母親だと認識して、浮かれすぎていた。

幸せ、なんて…。

『ジョンインくんの罪滅ぼしは、どうするつもり？』

俺は…

『A…大丈夫。散々苦しんだんだ。その分、幸せになれるよ』

『ジョンイナ…！！』

『…幸せにする、から…僕と、付き合ってくれませんか…？』

『っ、はい！もちろん！！』

俺は…

『…大丈夫。大丈夫だから。A。一緒に、育てよう』

『…ジョンイナ…』

『不安、か…？』

『…ジョンイナは、それで、いいの…？』

『…何、が…？』

『だって、この子は…』

『俺の子だ』

『ジョン、イナ…』

『俺とAの子だ、この子は。大丈夫』

『っ…！！』

『幸せになろう、3人で』

『うんっ…！！』

俺は…

『じ、ジョンイナ…妊娠、してた…』

『ほ、ほんと！？』

『うん…検査して…3ヶ月、だって』

『やった…やったじゃん、A！！2人目…4人家族になるんだな！！』

『…そう、ね』

『どうしたんだよ、A。子どもが2人になったら、きっと幸せも2倍だぞ！！』

『うん…この子、セフナと同じように、絶対、大切に育てる。私と、ジョンインの子なんだもん…

正真正銘の』

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