297.解放されたんだ ページ50
＜カイ＞
「おいしかった…」
「うんうん！よかった！Aが満足そうで！」
ベッキョニヒョンが言う…今日はよく意見が合うな。
「ごちそうさまでした！カイありがと〜」
「…ヒョン、俺持ち？」
「もちろん！ねーA、眠くなった！ベッド行こ！」
「ベク…お風呂入ってきて」
「えー、A、する前ってシャワー浴びる派だったっけ？俺は浴びなくてもAのそのままのにおいが、」
「しないから。早く入ってきて」
…うん。絶対俺がいんのにしようとすんな。
「…ちぇーっ。おいカイ、俺がシャワー浴びてる間にAのこと襲うなよ！！」
「しないよ。ベッキョニヒョンじゃあるまいし」
「むー…会話すらすんなよ！！」
…それは、A次第というか。
俺は話したいけど…Aは、俺と話したいんだか。
「ベク、いいから早く入ってきて」
…こんなに、ベッキョニヒョンを急かすってことは、期待していいのかな。
「…行ってきまーす…」
ヒョンは威嚇するように俺をキッと睨んでから、脱衣所に入って行った。
うるさい人が居なくなって、途端にシンとするリビング。
「…おいしかった？」
何か会話のきっかけは無いかと、そう聞いてみる。
Aは無言で頷いた。
「そうか…良かった。まさか…太るなんてこと、考えてるとは思わなかったよ」
Aは俺の方を見ず、ただソファに座って虚空を見つめている。
「…ジョンインの、ためだろ？」
そう聞くと、パッと俺の方を向いた。
「…どう、して…？」
「アイツの記憶、俺持ってるからさ」
俺は、Aの隣に移動した。
「…私は、あなたが誰なのか、わからない」
Aはそう呟く。
「ジョンインでもカイでもない…なんて呼べばいいの？」
「うーん…しっくりくるのでいいよ。他の皆は、カイって呼んでるよ。本名はジョンインだけど…そう呼ぶの、Aは嫌だろ」
「…分かった。カイにしとく」
「そうしてよ」
俺は、Aの手を握ってみる…Aはそれを、戸惑うように見た。
「今まで…ジョンインの望むことをしてきたろ、A」
Aの目は泳ぐ。
「カイの傷つくことをし、ジョンインの望むことをする。そうしてきたから、今の俺に対する接し方、分かんなくなってるんだろ」
Aは、顔を歪める…図星か。
「これからは、お前のしたいようにして、いいんだよ。
解放されたんだ、お前も、俺も、ジョンインから」
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作者名：LUKE | 作成日時：2020年9月17日 21時
