ユウガオは夜に咲く 6 (ページ48)

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295.拗ねた子どもページ48

＜カイ＞

…これは、間に合った、って言うのか…？

前々から持ってる合鍵で玄関を開けて中に入ると。

「ベクっ…！帰ってきたってば！！離れて！！」

ベッキョニヒョンが、リビングのソファにAを押し倒して首元に顔を埋めていた。

…間に合ってんの、これ。

服は着てるし…いや、ベッキョニヒョン、止まる様子がない。

「はぁ…何してんの」

「見れば分かるでしょ、襲ってんの。邪魔者は出てって」

「合意の上なら出てくけど、そうじゃないよね？」

俺がそう言うと、ベッキョニヒョンはピタッと動きを止めて体を起こしてこちらを見た。

「…合意の上じゃないって、なんでそう思うの」

「さっきA、離れてって言ったでしょ。聞こえなかったの？」

…なんでそんなしゅんとした顔すんの、ベッキョニヒョン。

いつもなら、何があろうと食い下がらないのに。

「…ちぇっ」

ベッキョニヒョンはノロノロとAから離れ、ソファの下に座る。

Aは驚いた顔をして、戸惑いつつも服を直しながらソファに座った。

「なんでカイがここに来るんだよ」

「最近ここを家代わりにしてるから。俺家持ってないし」

「…ちぇっ」

…何か言い返せよ、なんて。

おかしい…いつも飄々とした感じで俺に噛み付いてくるのに。

カーペットのほつれた糸をいじっている…拗ねた子どもみたいに。

Aも、心配そうにベッキョニヒョンの顔を覗いている。

…昼間のこと、まだ引きずってるとか？

案外気にする人だしな、ベッキョニヒョンって。

「べ～ク」

Aは、床に座っているベッキョニヒョンの横に体育座りをする。

「なに」

「お腹空いてない？」

…ご機嫌取りか、A。

前までならほっといてたのに。今日はベッキョニヒョンの世話をよくしてる感じがする。

「…すいてない」

ベッキョニヒョンは拗ねるように言った…けど。

　ぐぅ～…

ヒョンの方から、お腹の鳴る音が響く。

「ふふっ…」

Aが、笑う。口元が綻んでいる…そんな顔、ジョンイン以外にもするんだ…カイに、見せてこなかっただけ？

「わ、笑うなよ！」

ベッキョニヒョンはAの頭を軽く小突く。

「ごめんごめん。何が食べたい？…って言っても、この家栄養補助ゼリーしかないけど」

「出前、取ろう」

俺が言うと、Aはこちらに目を向けた。

「…そうね」

Aは、軽く俺に微笑んだ。

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