286.解雇した方がいいかな ページ39
＜スホ＞
ベッキョンが問題を起こすなんて、当然想定済みだ。
むしろ、午前中持ち堪えただけですごい。
「…はぁ」
Aはため息をつく。
「処分をお願いします、社長」
Aがそう言うと、ベッキョンは両手を膝の上でぎゅっと握った。
ベッキョン、大人しいな。解雇を、覚悟してるのかな。
「うーん…Aは、どう思う？」
「…というと？」
「ベッキョンは、この会社に必要無いかな？」
俺がそう聞くと、Aは察したのか、目を細める。
「…正直、」
「うん」
「ビョンベッキョンの午前中の仕事を見ていました。何人もが目を通したはずの資料にミスがあったのをすぐに気付いたし、あんなに修正点をズケズケと指摘する人なんてうちの部署にはいなかったので、助かりました。
上手く手綱を引けば、大きな戦力になるでしょうね、あなたの思惑通り」
Aは最後の方を嫌味ったらしく言った。
ベッキョンはAを見て、目を丸くしている。
「はっきり言って、仕事のみでいえばベッキョンは天才です。ただ、性格に難がありすぎる」
「うん、そうだね」
「リスクが大きすぎると思うんだけど。政界の大物暗殺にあんだけ時間をかけるほど慎重な性格のスホが、そのリスクを取ってベッキョンを会社に置く理由がわかんない」
「じゃあ、解雇したほうがいいかな？」
俺が微笑みながらそう聞くと、Aはイラついたような表情を見せる。
「はっきりお願いしてよ。私に、ベッキョンを上手くコントロールしてくれって。遠回りなんだから」
「それは普段のAだろ？」
俺がそう言うと、Aは俺を睨む。
「はは…ごめん、A、揶揄って。
ベッキョン、悪いけど、1人でデスクに戻れる？」
「え…？」
ベッキョンはびっくりした表情で俺を見る。
「スホヒョン、俺…解雇じゃ、ないの…？」
「今からAと話し合うから、取り敢えず戻って。A、優秀な社員だから、いない穴埋めるのなかなか難しいんだよね。Aのことよく分かってるベッキョンなら、できるだろ？」
「う、うん…」
「Aの仕事、代わりにやっといてあげて。何をすればいいかは、隣のデスクのチャニョルに聞いてよ」
「…チャニョル…」
ベッキョンは不服そうにしつつも、部屋を出て行った。
「…で、どういうつもりですか、社長」
Aは背もたれに思いっきり体を預け、脚と腕を組んだ。
社長にそんな態度取るなよ…。
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作者名：LUKE | 作成日時：2020年9月17日 21時
