270.考えてるよ ページ23
＜カイ＞
だいぶ、夜も更けてきた。
俺のことをジョンインの人格だと思っているAは…俺に甘々で。
好きな人との幸せな時間は、あっという間に過ぎるな、なんて。
俺も、自然と…ジョンインのような性格になっていた…
…ジョンインは、元々、素の俺と性格が似てるし。
素でいられるって…すごく楽だ。
「ん…ジョンイナ…」
「寝れない…？」
「うん…横、来て…」
「え…」
「はやく…」
「う、うん…」
夜…Aは眠れないらしく、わざわざ俺のためのスペースを開けて、横に寝るように言われ。
俺は言われるがまま、ベッドに上る…
病院のベッドは小さくて、その分、Aと距離が近い。
俺が上ると、ギシギシと音を立てるベッド。
目と鼻の先に、Aの顔があって…ドキドキする。
「ふふっ…ジョンイナ…赤くなってる…」
Aが話す度、人工呼吸器が曇る。
「からかわないでよ…」
俺はAの髪に手を伸ばして、長い髪を耳に掛けた。
Aはくすぐったそうに笑う。
「明日…退院できるかな」
「うん…早く、こんな狭いベッド抜け出して…こんな邪魔なものも取っ払いたい」
「はは…そうだね」
…いつまで、ジョンインのふりをしていようか。
明日は日曜日…明日くらいはいいだろう。
明後日は月曜日…仕事が始まる。
仕事場でジョンインのふりをするのは…
いや、もはや、ふり、なのか…？
これ、もはや素の俺、だよな…？
元々、俺がジョンインのふりをすると決めたのは。
Aに、実はジョンインのふりをしたカイだと打ち明ければ…
ジョンインの人格とカイの人格の境界が分からなくなって、同一人物だと認識してくれるんじゃないか、と思ったからだ。
それが…俺が、今1番分からなくなってる。
ジョンイン？カイ？
…いや、俺は、俺だ。キムジョンインだ。
リラックスして、自分の思うがままに動く。
それが、素の俺、キムジョンインの性格のはず。
周りを気にしすぎて…本当の自分が、分からなくなっていたんだな。
「ジョンイナ…？」
「あ…ごめん、A」
「考え事…？」
「うん…まぁね」
「私のこと、考えててくれた…？」
…本当に…可愛いこと、言うんだから…。
「考えてるよ、Aのことは、ずーっと。出会った日から、Aのことを考えなかった日なんて、ないよ」
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作者名：LUKE | 作成日時：2020年9月17日 21時
