268.もったいない ページ21
＜チャニョル＞
『世界のたった70億分の1でしかないお前のちっぽけな世界の常識が、全世界に通用すると思うなよ』
不覚にも、かっこいい…なんて、思っちゃった。
それと同時に…おんなじくらいの歳っぽいのに、どうやったらそんなに違った生き方をできるのかって…
俺お得意の好奇心が湧いてきて。
「チャニョル、質問は１つずつにしないと、ベッキョンくん困ってるよ」
ミンソクさんは…どこか面白そうにしながら言った。
「あ、そっか…えっと…じゃあ…ベッキョンって、普段何してんの？」
「普段…あの部屋にいるけど」
ベッキョンはVIPルームを指差す…
「まさか、ずっと、あの鎖に繋がれて…！？」
「うん。そーだけど？」
「な、なんで…もったいない！」
「…は？」
「もったいないよ！ベッキョンみたいな広い視野を持った人があんな狭い部屋に…もったいない！」
…俺、酔ってるな。
酔ってるのもあるかもしれないけど…
カイや、セフンや、Aと、同じような空気感を感じるベッキョン…
社会で活躍できそうなのに…俺なんか出来損ないと違って…。
羨ましい、と…ちょっと思い始めた。
「…もったいないっていうの、お前の主観だろ」
「…っていうのも、ただのベッキョンの意見だろ？ミンソクさん、どう思います！？」
隣にいるミンソクさんに話を振ってみる。
「う、うーん…そうだね。ベッキョンくん、歌もすごく上手いし、考え方も素敵だと思うから…確かに、もったいないかもね」
ミンソクさんは苦笑いしながら言う…すみません、合わさせちゃって。
「昼間、ずっとあの部屋に篭って1人でAの盗聴してるわけだろー？そりゃ寂しくもなるよ！」
「ひとり…」
また、ベッキョンはそう呟く。
ひとりひとりって…俺には…その本当の意味は、よく分からないけど。
「…Aが俺から離れたら、いよいよ俺はひとりになる…」
ボソッとそう呟くベッキョン。
「…カイのこと、好きになったら…Aは俺から離れていっちゃう…」
Aが、カイのことを好きになる…あり得るな。
ベッキョン、Aのこと大好きみたいだし…それが寂しいのかな…。
「…うぅっ…Aが、離れていっちゃう…っ！」
ベッキョンの声が震え始めて、つうっと頬に涙が流れるのが見えた。
「…そんなにAちゃんが離れてくのが嫌なら、ベッキョンもカイみたいに俺たちの部署、来る？」
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作者名：LUKE | 作成日時：2020年9月17日 21時
