267.たった70億分の1 ページ20
＜ベッキョン＞
…出た。
『ひとを、ころす、のは…だめな、こと、だ…』
『あんたらみたいに…自分の正しいと思うことをして周りから称賛されて認められるような人間、大っ嫌い！そういう奴が勝手にこれはダメ、あれはダメって、我が物顔で俺らを縛り付けるんだ。周りから理解されづらい俺の…俺たちのような人間を無視して、苦しめてることも知らずに』
コイツも…同じか。
『私は…生きづらい。周りから見たら、普通で幸せな人生を歩んでるらしい。そんな程度で自分を可哀想な人間だと思うな、だって。彼らはこの世界を、自分の物だというように、勝手に私を普通だ幸せだと決めつけるの。所詮彼らも、この世界に生かされてるに過ぎないのに』
A…コイツもそうらしい。
自分の世界で正しいことは、どの世界でも正しいことだと思ってるらしい。
「世界のたった70億分の1でしかないお前のちっぽけな世界の常識が、全世界に通用すると思うなよ」
俺がそう言うと、チャニョルは大きく目を開いた。
「…すごい…」
そう、ポツリとヤツは呟く。
「ベッキョンって…すごいな…」
「は？」
「すごい、広い世界を、見てる…俺なんかより、断然…」
…なんでさっきまで怒ってた奴が、急に感心しだすんだよ、なんて。
俺も、感情の器の出入りは激しいから、気持ちは分かるけど。
…ん、分かる？
この男の気持ちが…？
「ベッキョンも、ジョンデも、カイも、セフンも、Aも…俺とは違う生き方をしてるみたいに感じてたんだけど…そうか…視野が広いのか…」
チャニョルは納得したように呟いて、グイッとモヒートを飲む。
「ジョンデ、おかわり！」
「チャニョル…酔ってる…？」
「ううん、酔ってない！おかわり！」
「わ、分かったよ…」
チャニョルはジョンデにグラスを渡すと、パッと俺の方を見た。
「どうやったらそんな生き方できんの？どうやって生きてんの？普段何してんの？平日の昼間とか！さっき歌ってたのって、なんで？あ、あの部屋の鎖！なんでつけてんの？」
怒涛の質問攻撃…なんなんだ、コイツ。
調子狂わされる…。
ジョンデの言う通り、酔ってるだけかもしれないけど。
でもなんか…ペースが崩される…。
「え、えっと…」
俺がしどろもどろになっていると、クスクス、と目の前のジョンデが笑う…うざ。
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作者名：LUKE | 作成日時：2020年9月17日 21時
