アムネシアを枯らすな 2 (ページ45)

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94.忘れていいよページ45

＜ベッキョン＞

『…だ、だめ、だろ、A…』

Aは、そんなことができる人じゃない。

冷静じゃ、ない。相当メンタルがやられてる。

『手、退けて』

『ベク…嫌…？』

俺を冷たいフローリングの上に押し倒してズボンのチャックに手を掛け、上目遣いに俺を見るA…

やばい、けど…！！

フローリングのおかげで、なんとか、ギリギリ理性が保っていられる。

『っ…嫌、じゃ、ないけど…！！そういう問題じゃ、』

『忘れ、たいの』

『えっ…』

『もう…嫌なの…忘れたいの…今だけで、いいからっ…』

…だめだ、流されちゃ。しっかりしろ、ビョンベッキョン。

『…不倫、だぞ。Aはそんなことができるひとじゃない。思い出して。冷静になって』

『…べく…』

また、ぶわぁっと涙を溢れさせるA。

…何を、抱えてるんだよ。

ジョンインとは、どうやら上手く行ってないらしい…それだろうか…。

ぎゅっと抱き締めて、背中をさする。

…付き合ってた頃より、細くなった気がする。

そっと抱き上げて、ふかふかのソファに座る。

『大丈夫…大丈夫だよ…』

子どもを育てつつ、仕事もしつつだもんな…相当疲れてるんだろう。

でも、軽いうつ病…

どうやら、体力的に、だけじゃ、ないぞ。

『何か、嫌なことあったの？…あ、話したくなかったら、いいんだけど…』

『…話したく、ないっ…』

『そっか…それは、どうして？』

『っ…』

人の気持ちを優先して、自分が傷つくA…

『俺は、ちょっとやそっとのことじゃ傷つかないよ。それよりもAが傷ついてるのが耐えられない』

俺がそう言うと、Aは顔を上げた。

『っ…じょんいなと、うまく、いってないって、言ったら…べくは、怒る、でしょ…？』

そう言って、顔を歪めるA。

『…うん、そうだね』

Aを幸せにするのはジョンインなのだと、自分に言い聞かせて…どうにか、Aを諦めようとしていたのに。

『うまく、いってないんだね…』

俺が言うと、さらに顔を歪めて俯いた。

…そんな顔、しないでよ。

『でもっ…子どもが、いるからっ…幸せに、しないと…』

俺には子どもがいないから、その辛さは分からないけど。

家の外では仕事をし、家の中では子育てをし。

休める場所なんて、Aには無かったのか、も…

『…今だけは、忘れていいよ』

『べく…』

『忘れよう、A』

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