89.涙と絵本 ページ40
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パタン、とドアが閉まると。
「ぎょんすひょん、かえっちゃった…」
セフンが寂しそうな声を出す。
「セフナ、また来てもらおうな」
「うん！」
ジョンインが微笑みかけると、セフンは途端に笑顔でジョンインを見上げて…隣にいる私に目を向ける。
「あ…」
「ん…？どうしたの、セフンくん」
「ぬ、ヌナ、じゃなくて…おんま…」
さっきまで私のことおんまって呼べてたのに…ギョンスが帰って改まると、緊張しちゃうのかな。
「セフナ、どうしたの？」
「…っ！！」
セフンは突然、顔を真っ赤にして走り出した。
「セフナ！？どうした！？」
ジョンインが慌てて追いかけ、私もそれに続く…と。
「お…お…おんま、えほん、よんで…」
もじもじと、その小さな体をよじって絵本を大事そうに抱えてながら控えめに言うセフン…か、かわいい…
って、見惚れてる場合じゃなくて！
「うん、いいよ」
「や、やったぁ！！！」
セフンはぱあっと笑顔になり、絵本を私に渡してくる。
「ゆめ、だったんだ…おんまにね、えほんよんでもらいながらねるの！」
「そうなんだ…たくさんしてあげるよ」
「ふふふっ…うれしい…」
「よかったな、セフナ」
「うん！あっぱも、来て！」
「え？」
セフンはジョンインの手を引いて、寝室に向かう。
本の読み聞かせ、か…お母さんっぽいな…。
私は口元を緩めながら2人を追う。
すでにセフンは寝っ転がっていて、ジョンインもその隣で横になっていた。
「おんま、はやく！」
「ふふっ…うん」
私はジョンインと、セフンを挟むようにして寝っ転がって。
「じゃあ…はじめるよ」
「うん！」
絵本の表紙を開く。
「むかしむかし、ある、ところにっ…」
あれ…
「…おんま…？」
「A…どうした…？」
視界が滲んで、声が震える。
なんで、だろう。
セフンは私が本当の母親だって分かって、喜んでくれてるのに。
今まで、辛い思いさせてごめんっていう、セフンへの申し訳なさ…？
「…ごめん。大丈夫。…むかしむかし、」
「セフン、ごめんな。明日でも、いいか？」
「え、ジョンイン、大丈夫だって、」
「…うん！お楽しみはとっておくものなんでとぅよー！」
「そうか。じゃあ、今日はおんまとあっぱに挟まれて寝ような」
ジョンインは私の持っていた絵本を取り上げる。
「うん！」
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作者名：LUKE | 作成日時：2020年9月8日 22時
