アムネシアを枯らすな 2 (ページ29)

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78.夢を見るページ29

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『んー、Aー…』

『もうベク…起きてってば』

『ちゅーしてくれたら起きるってばー…』

『まったくもう…』

また、ベッキョンの夢だ…どうして。

『ふふ、A～愛してるよ～！！』

ぎゅーっと抱き締められて…私は。

『…私も』

口が、勝手に動く。

『え、今日は素直だね、A…そんなAももちろん好きだよ～！！』

ぎゅーっと抱き締められて…頭がぼーっとする。

『ねーねー、久しぶりにさ、旅行しない？』

『旅行…あれ、一緒に行ったことあるっけ…？』

『あ…そっか…な、なんか行った気になってた！ね、行こうよ、旅行！温泉リゾートとかどう？一緒にお風呂入って～ぐふふ…』

『またいやらしいこと考えてる…でも温泉かぁ…いいね、楽しそう』

これは…実際にあった、会話だ…口が勝手に動くのは、そのせいだ…。

『よし、そうと決まったら！』

ベッキョンはタブレットを取り出す。

いつもの、ように…私を抱き締めながら、タブレットを一緒に見る。

『わー、すごい！スイートルーム、１つの部屋に１個ずつ温泉あるんだって！！2人きりで入れるよ！！ここにしよ！！』

『え、ちょっ、ベク…』

『あ、ここプールもあるんだ…水着も買お！んー…どれがいい？』

『待ってよ、ベク…』

『…もう、A…お金のことは気にしなくていいんだってば…俺稼いでんの！！天才作曲家だからね！！』

『知ってるよ、それは…でも、私、こんなにしてもらうほど、ベクのためになってる…？』

『はぁーっ！！Aはなんも分かってない！！』

ベッキョンはタブレットを置いて、しっかりと私の目を見る。

『ここにいてくれるだけでいいの…俺の腕の中にAがいるって事実が、嬉しくてたまらないの…お金じゃ換算できないくらい、俺にとってAは、ここにいてくれるだけで、価値があるんだ』

繊細でしなやかな指が、私の髪を耳に掛ける。

『遠慮、しないでいいんだよ。俺は、Aをお金で困らせたりしない』

優しく微笑むベッキョン。

…こんなに優しい彼が、私にDVなんて…ますます、分からない。

『どうして、束縛なんてしたの』

『え…？』

私は、自分の意志で口を動かす。

『どうして、連絡先消したの。どうして、外に出させてくれなかったの。どうして…セフンくんに、ひどいこと、したの…』

そう言うと…ベッキョンは、ふっと消えた。

代わりに。

「A！！大丈夫か！？」

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