アムネシアを枯らすな 2 (ページ25)

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74.指輪と苦労ページ25

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「なに…指輪？」

「うん…これ、ずっと、はめてるの…？」

「…もちろんだよ」

ジョンインは優しく微笑む。

「結婚、してるんだから、俺たち…あ、Aの分もあるよ。持ってくる」

立ち上がって、ガサゴソと引き出しを探って…取り出して来たのは。

「これが、俺たちの結婚指輪。こっちが俺ので、こっちがAの」

「わぁ…」

ダイヤが一個はめてあるだけの、シンプルなデザイン。

「結婚式の時に交換したんだよ、これ」

ジョンインは隣に座り、私の肩に手を回す。

「懐かしいな…リングボーイ、セフンだったんだけどさ…出番の直前まで起きなかったらしくて、」

「え…セフンくんが産まれてしばらくしてから結婚式挙げたってこと…？」

「…あー…」

ジョンインは言葉を詰まらせて俯いて。

「俺たち、学生結婚だからさ…しかもデキ婚ってやつで…お金無くて、一生懸命貯めて、この指輪買って結婚式も開いて…その頃にはセフン、1人で歩けるようになってたからさ」

学生結婚に、デキ婚…！？

「そう、だったの…！？」

確かに、ジョンインは若いし…それで、5歳のセフンがいて…

大変、だっただろうな…特に、お金の面で…。

「…そんな顔、すんなよ。確かに苦労したけど…その分、幸せだったんだからさ」

「ジョン、イン…」

本当に、あなたは、強い人…。

「でも、1番苦労したのは、Aだ。突然妊娠したって分かって、就職1年目で産休取って、でもお金無いから産んですぐに復帰して仕事して、子育てして…Aが、1番頑張ってたよ」

「そんな…」

その苦労も、幸せも、私は、覚えてない…

「俺、全然支えになれてなくて…それどころか、」

「そんなこと、無いよ…十分、支えになってたと思う。こんなに心強い人なんだもん」

「A…」

涙声で私の名を呼んで、ぎゅっと私を抱き締めて。

「これ…」

少し歪んだ、シルバーの指輪…

「事故の衝撃で、ちょっと歪んじゃったけど…Aも、ずっとこれを付けてくれてたんだ、ペアリング…付けて、みる…？」

「…うん！」

「じゃあさ、俺の膝の上、来て」

「え？」

「いいから、早く」

言われたように、ジョンインの膝の上に座って。

左手をそっと掴まれて、薬指に、少し歪んだシルバーの指輪を、ジョンインがはめてくれる…ぴったりだ。

そっと、ジョンインはその指輪にキスをした。

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