71.幸せにしなきゃ ページ22
＜ジョンイン＞
仕事を早く終わらせて。定時に、会社を出る。
いつも通り車で保育園まで向かうと…チャニョリヒョンが出入り口の前に立っていて、俺の姿を見ると、こっちに手を振ってきた。
近くまで行って、運転席の窓を開ける。
「ごめん、メールしたけど…延長料金、今日もいらないからさ…ちょっと話、いいかな」
「分かりました。乗ってください。車の中で話しましょう」
チャニョリヒョンを助手席に乗せて、駐車場に車を止める。
グッとハンドブレーキを引いて。
「ベッキョンの、ことですか」
「あはは…単刀直入だね…」
「セフンを長く待たせたくないので…条件は、なんですか」
「条件？」
「ベッキョンが、家に来ない条件です」
「あぁ…条件、なんて、そんな大層なものじゃないんだけどさ…前みたいに、1週間に1回くらい会わせてやってくれないかな…？」
「1週間に、1回…」
前みたいに、か…どうだろうか。
「…Aの、意志を尊重します」
「ジョンインくん的には…？」
「俺は…ベッキョンがうちに来るのを避けることが優先なので。セフンと、二度と会わせたくない」
「そっか…分かった。帰ったら、Aちゃんに聞いてみて」
Aは…なんて、言うだろうか。
嫌だ、と言ってくれたら、それはそれで嬉しい…まぁ、他に代案を考えなきゃいけないけど。
でも…少し、気がかりだ。
『ベッキョンへの気持ちは、もう完全に、無い？』
『…もちろん』
あれは…俺が、言わせただけで。
Aの本当の気持ちは…どうなんだろう。
1週間に1回会わせたら…Aは、ベッキョンに気持ちが入っていくんじゃ…
「以上、ですか？」
「あー…あとさ、セフンくんのスモック、だいぶぼろぼろになっちゃってきてるから…新しいの、買えるかな…？」
「…はい。分かりました。以上、ですか？」
「あはは…急ぐ気持ちは分かるよ。以上だよ。セフンくん、連れてくるね」
「…はい、ありがとうございます」
「うん」
チャニョリヒョンは車を降り、保育園の中に入っていく。
俺はハンドルに手をかけ、頭をもたれさせた。
…なに、弱気になってんだ、俺。
ベッキョンより、俺の方が、Aを幸せにできるはずだ。
大丈夫、
大丈夫…
コンコン、ガチャ
車のガラスが叩かれ、ドアが開く。
「あっぱ、ただいまぁ！！！」
…幸せに、しなきゃいけない。
Aも、この子も。
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作者名：LUKE | 作成日時：2020年9月8日 22時
