ユウガオは夜に咲く 3 (ページ29)

今日:27 hit、昨日:1 hit、合計:57,709 hit

126.綺麗な目の女ページ29

＜カイ＞

長いソファに横になって、ぼーっと天井を見上げる。

『ここが、どんなことする場所か知ってるか？』

『…』

『安心しなよ。あんたみたいな女で興奮なんかしないから』

ただの、気まぐれだった。

綺麗な女ばかりで、飽きていた頃。

あの、歓楽街の真ん中で、彼女は男たちに絡まれていて。

『ねぇ、何してんの』

『げ、カイ…！？』

『やべぇ、カイだ！逃げろ！！』

俺を見ると、男たちは一目散に逃げていった。

…俺何もしてないのに。

見下ろすと、女が、地面に蹲っていた。

『…あんた、大丈夫？』

そう聞くと、女は少し顔を上げた。

『…なんで、助けたんですか』

その口調は…余計なことをしてくれた、と言っているようで。

『助けたつもりないけど。でも女が1人で歩いてたら危ないでしょ』

『どうでも、良いんです。どうでもよくなって、ふらふらと歩いてたら、ここにいたんです』

『どうでもいい、か…』

言われなくても、その外見から分かる。

長い髪はボサボサ、分厚いメガネはずれていて、小太りで肌の手入れも雑。

自分磨きを怠ってる雑な女…もはや女ではない、と、その時は感じた。

はっきり言って、見た目だけじゃ興味は全くそそられない。

…ただ。

次の女の言葉に…共感した。

『理解、されづらくて。人に相談しても、順調な人生じゃないかって。何にそんなに悩むのか分からないって』

『理解…』

俺にも、理解者なんていなかった。

昔から喧嘩が強く、気づけばてっぺんに立ち、皆から恐れられる存在になった。

みんな怖がって俺には近付かない。

金も自然と集まり、綺麗な女も飽きるほど寄ってくる。

でも全て…上っ面だけだ。

権力や金など、簡単に失うことができるものを目当てに寄ってくる奴ばかり。

『このまま苦しみ続けて死ぬんです。そういう定めなんです、私』

そう言われた時。

『ここであんたに会ったのも、定めなのかもしれない』

俺のことを知らず…俺の金や権力や外見など、どうでも良さそうなこの女なら。

『俺が、お前を理解しようとしてやる。だから…お前も、俺を、』

俺の、理解者になってくれるんじゃないか、と、思った。

女は顔を上げて、やっと目が合った。

ぱっちりとした、綺麗な目をしていた。

.