ユウガオは夜に咲く 3 (ページ22)

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121.腕を掴んだページ22

＜チャニョル＞

プツリと、電話は切れた。

ぼーっと画面を見つめる。

彼女は、しきりに謝って…泣いていた。

どうして。

本当に、謎が多いんだから。

目を閉じる。

『チャニョル、君は、どんな人でも分け隔てなく、声をかけることができる人だと思う…特に、俺みたいな1人ぼっちに』

『仕事はちょっぴり苦手かもしれないけどさ…でも、違うところで、たくさんの人を救える人だと思うよ』

『あとは仕事ができたら完璧だね！これからは会う機会減るかもしれないけど…でも、また飲みに行こう』

「イーシンさん…」

また、って、言ったのに。

会社を辞めて…新しい出発を控えた、このタイミングで。

残酷だ…

　ピンポーン

「んっ…」

いつの間にか寝ていたらしい。

インターホンの音で、目が覚める。

宅急便かな…

ぼーっとする頭で、インターホンを見る…

「え、A…？」

荷物を持ったAが、俯きながら立っている。

「はい…」

『あ…チャニョル…ごめん…心配で、来ちゃった…』

「え…」

住所も、ギョンスに聞いたのかな…どうして、そこまで。

『迷惑だったら、帰る』

俺は…

嬉しい？怖い？

何の感情も、今は浮かばない。

『…ごめん。突然でびっくりしてるよね。今日は、帰、』

「待って」

エントランスのドアを解除する。

『あ…ありがとう』

Aがエントランスを抜ける映像を見届ける。

どうして解除した？

…分からない。

　ピンポーン

やがて、部屋のインターホンが押されて。

　ガチャ

「…A」

ドアを開けると、インターホンで見た時と同じ…俯いたAが、立っていた。

「あの…これ…」

袋を渡してくる。

「料理が好きだって…聞いたから…でも私、料理できないから…せめて材料だけでも、」

「どうして来たの？」

「心配、だったから…」

「俺のことが、どうしてそんなに気になるの？」

「…ごめんなさい」

「一人暮らしの男の家に、女の子1人で来ちゃダメだ」

本当は…Aがわざわざ心配して俺の家に来てくれて…少し、嬉しい、という感情が浮かんできた、けど。

「…ごめんなさい。じゃあ帰るね」

また、彼女の声は震えていた…

から。

体の向きを変えて、帰ろうとする彼女の腕を、掴んだ。

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