ユウガオは夜に咲く 3 (ページ16)

今日:25 hit、昨日:1 hit、合計:57,707 hit

115.ヌナだけどヌナじゃないページ16

＜セフン＞

　ガラッ

「あ、A！やっと出て、」

「ベクは2メートル以上離れて！」

「…ちぇっ」

Aヌナはシャワールームのドアから顔だけ出す。

ベッキョニヒョンは渋々少し離れた。

「あっち向いて！」

「えー、見てたい、」

「あっち向け！変態犬！」

「口悪いなぁ…ま、それも興奮するけどね！」

ベッキョニヒョンはヒョイっとむこうを向く。

…大変だな、色々と。

「はい、ヌナ」

俺はヌナにスーツと鞄を渡す。

「セフナは本当にいい子ね～大好き！」

「俺のことは～？」

「大っ嫌い！！！」

「えへへ、ありがとー！」

…ヒョン、会話成立してないから。

バタン！とシャワールームのドアが閉じられる。

ガサゴソと、中から着替えるような音が聞こえる。

「こんだけで興奮できるけどなー、Aにやっぱり直接触れたいなー」

…ヌナの、変態犬って表現、的確だな。

「ヒョン、Aヌナを困らせないでよ」

「困らせてない！好きっていうのを全身で伝えてんの！愛してるよーって！」

「伝え方が悪い」

「じゃあセフナならどうやって伝えるの？」

「俺は…」

…どうだったかな、愛の伝え方って。

「セフナはAのこと好きでしょー？」

「…今のAヌナは嫌なの。前の方が好きだった」

「セフナはAと付き合い長いもんねー」

俺がAヌナは親が親友同士で、小さい頃からよく遊んでた。

俺の初恋は…Aヌナだったし。

でも、ヌナは変わった…カイと、出会ってから。

カイの好みなように変わっていった。

俺の好きだったヌナは、真面目で繊細で危うくて…年下の俺が支えなきゃって思うくらい。

実業家だった親の元に生まれた俺の夢は、社長になって大金持ちになってAヌナと結婚して幸せに暮らすこと、だったのに。

社長になって金持ちになる夢は叶ったけど、俺の好きなAヌナがいなくなって…

色んなことに、無関心になった。

ヌナだけど、ヌナじゃない。

　ガラッ

「悪かったね、嫌なヌナになって」

分厚いメガネをかけて、低い位置で髪を結んで、ぴっちりスーツを着て、薄化粧のAヌナ。

…この格好の方が、俺はしっくり来る。

「セフナ、会社、連れてって。あの変態犬は置いといていいから」

「Aー！こんなに反省してるじゃん！」

「わかったよ、ヌナ」

…でも、なんだか、離れられないんだ。

.