ユウガオは夜に咲く 3 (ページ11)

今日:33 hit、昨日:1 hit、合計:57,715 hit

110.エレベーターの攻防ページ11

＜カイ＞

エレベーターの前で、軽く振り返る。

「ベッキョニヒョン」

隣にいるのは、おそらくAだろう。

彼女が見えるまで振り返りたくは…ない。

「はぁ…なんでこのホテル使うわけ？分かってたでしょ、俺とAが来るって。嫌がらせなの？」

ベッキョニヒョンは口を尖らせて俺を睨む。

「…気分」

　チーン

エレベーターが開き、戸惑う女の手を引いて、乗る。

…ベッキョニヒョンも、Aの手を引いて乗ってきた。

「何、ヒョンこそ、嫌がらせ？」

「ん〜？今からAにご褒美もらうのが、待ちきれなくて！」

「へーよかったね」

ベッキョニヒョンは10階のボタンを押す。

俺は20階のボタンを押す。

「最上階のスイートかぁ。夜景綺麗だろーね！A、俺らも変える？」

ベッキョニヒョンは後ろからAに抱きついて顔を覗く。

「…ベク」

やっとAの顔を、見れた。

Aはベッキョニヒョンを睨んでる。

「その顔も俺大好きだよー！」

「ちょ！」

ベッキョニヒョンは俺に見せつけるように耳を舐めて…

あぁ、うざい。

「んっ、ベク！やめてっ！待て！」

「んー？待てない！」

ベッキョニヒョンは強くAを抱き締めて…手を、下の方に伸ばす。

「…盛りのついた犬が」

俺がそう言うと、ピタッと手を止める。

「…さすが、素性も分からないヤツを抱いて好きな女が自分のものにならない寂しさを埋める男。よっぽど俺なんかより人間らしいね」

　チーン

10階に着いて、ドアが開く。

「A、行くよ」

ベッキョニヒョンはAの手を引っ張り、さっさと出て行った。

Aは俺のことを、一度たりとも見なかった。

ドアが、静かに閉まる。

「…な、なんだったん、ですか、あの人たち…」

「ただの知り合い」

「知り、合い…」

戸惑う女を尻目に。

10階から20階までは、すぐに感じた。

　チーン

ドアが開き、女の手を引いて、降りる。

鍵で部屋を開けて、入る。

「うわぁ、すごい…」

最高級のスイートルーム。

女は中に入って、キョロキョロと中を見回している。

『その女、この部屋に見合う価値、あるの？』

…うるせぇよ。

俺は備え付けの電話を取る。

「スクリュードライバー１つとマティーニ１つ」

そうだけ言って、受話器を置く。

「風呂、入ってこいよ」

.