301.よろしく ページ4
＜チャニョル＞
『チャニョルへ。よろしく。チャンイーシン』
小さく折り畳まれた紙を広げると、その文字と共に、謎のURLとメールアドレスらしきものが、確かにイーシンさんの字で書かれていた。
「…え？」
何これ…初めて見た。
URLの方はやたら長いし、メルアドもアルファベットと数字がごっちゃごちゃ…完全に怪しい…。
しかも、よろしく、って、どういう意味だろう。
まるで…イーシンさん…
いや、そんなはず…
胸が、急にざわざわする。
朝からこんな騒めき…穏やかじゃないな…
「って、こんなことしてる場合じゃない！！」
急いでボールペンを胸ポケットに戻そうとする、が。
『このボールペンをくれた日だったんだ、亡くなったの…』
『…それ、ベクの前では見せない方がいい』
…なんなんだ、このボールペン…
じっと、見つめてみる。
どうしてベッキョンに見せちゃいけないんだ？
…ベッキョンは凶暴だから壊されないように？
いや、なんか…この紙が入ってたっていうのもあって、それだけじゃない気が…
「チャニョル？急いでるんじゃないの〜？」
「あ、やべ！！」
紙をボールペンの中に戻して…ベッキョンに見られないよう、カバンの中にしまった。
「ごめん、会社、行くね！！」
適当にお金を置いて…
「チャニョル、また会おうね〜！」
この女と二度と会いませんように、と願いつつ、部屋を出た。
「おはよう、ござい、ます…」
会社に着いたのは、近かったといっても結構ギリギリだった。
「おはようチャニョル…昨日、大丈夫だったか…って聞こうとしたけど、大丈夫じゃなさそうだな」
ギョンスが呆れたように俺を見る。
「俺…また昨晩やらかした？」
「そんなに飲んでなかったはずなんだけどな…」
ギョンスが不思議そうにそう言うと。
「疲れてたらお酒が回りやすいってジョンデが言ってた」
隣のデスクからそう聞こえ…
「A…おはよう…」
「おはよう、チャニョル」
隣を見ると、きちっと座ってディスプレイを見ながらキーボードに手を滑らせるAと。
その後ろから思いっきり抱き着いてこちらを睨む、ベッキョン…。
「べ、ベッキョンも、おはよ…」
一応、言ってみると。
「おはよ、晴れてるのに髪べちゃべちゃなチャニョル」
.
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作者名：LUKE | 作成日時：2020年10月17日 23時
