326.信号は赤 ページ29
＜カイ＞
会社に向かう車内。
Aと2人きりっていうのが…なんだか、緊張する。
今までこんなこと無かったはずなのに。
「…どう、する？」
「何が？」
「チャニョリヒョンへの…事情聴取」
話題なんて、そういう…しなきゃいけないことしか、なくて。
もっと…どうでもいい事話したり…もっと踏み込んで、Aの気持ちを聞いたり…本当は、したいのにな。
「あー…まぁ、お昼の時間に聞くわ」
「ギョンスヒョンがいるでしょ？」
「カイが遠ざけといて。私1人で大丈夫だから」
「いや…」
『さっき見てたボールペン、誰にもらったの？』
『なんで、もらったって分かったの…？』
Aは、詰めが甘い…そして、チャニョリヒョンはそれへの嗅覚が異常なほど良い。
相手のボロに、気付きやすい。
だから、大丈夫、と言われても、怖い。
「まぁ、最悪晩ご飯誘って酔わせて、それでもダメならホテルに連れ込んで、」
「ダメだ！！」
「うわっ…ちょ、いきなり大きい声出さないでよ…」
ちょうど赤信号になり、キュ、と車を止める。
「…そんなこと、させないから」
俺はAの目を見た。
「お前の、身体は…」
俺はつい、言い淀む。
「…何？俺のものだって言いたいの？」
Aはそんな俺を、細くした目で見上げる。
…言いたいよ、そりゃ。
「言っとくけど、私はあなたのものになってない」
「…うん、知ってる」
「私はやりたいようにやる。…新しい恋人も…自分で、見つける…」
Aはそう言いながら俯く。
俺は、ジョンインと似てる(ほぼ本人なんだけど)から、ちょっと有利なだけで。
まだ、俺がAの恋人になるとか、決まったわけじゃない。
「…うん、わかってる。Aは自分のやりたいことをやればいいよ。俺もそうするから」
俺はAの頬に手を伸ばす。
「だけど、知っておいて。俺は、Aが好きだよ。愛してる」
Aの顔をこちらに向けると、Aは目を伏せて困ったような表情をする…いちいち可愛い顔するなよ。
「…キス、したい。だめ？」
「…やりたいことをやるんでしょ。聞かないで」
その言葉を聞いて、俺はそっと唇を重ねる。
ゆっくり、味わうように…
パーッ！！！
大きなクラクションにびっくりして前を向くと、とっくに信号は青になっていたようで、次々と車が隣を過ぎ去っていく。
「…やべ」
俺は赤くなった顔を誤魔化すように、アクセルを踏んだ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 124人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「EXO」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：LUKE | 作成日時：2020年10月17日 23時
