320.危険に晒したくない ページ23
＜カイ＞
「カイはその補助…カイ？」
「あ…なに、スホヒョン」
少し考え事をしていて、スホヒョンに呼ばれてハッとする。
「いや…カイは、Aのサポートをしてあげてね」
「…うん、わかった」
「セフンはセキュリティの強化をよろしく」
「了解」
「俺は？」
「ベッキョンの仕事は…Aとカイの仕事の邪魔をしないこと、かな！」
「…スホヒョン、俺、邪魔するのが得意なんだけど」
「仕事の邪魔をするなっていってるんだよ。それ以外は好きにしなよ」
ベッキョニヒョンはスホヒョンをジトッと見る。
「そんな目で見るな…ベッキョンは俺たちの切り札なんだ。いざとなれば…よろしく頼むよ」
スホヒョンは光の無い目を細めてベッキョニヒョンに微笑んだ。
「…りょーかい」
逆に、ベッキョニヒョンの目はギラリと光った。
「よし、仕事の話は以上だよ。チキン、いただくね」
スホヒョンの目に光が戻った。
…チャニョリヒョンが、裏データにアクセスしようとした…？
チャンイーシンに、何か託されたのか…でも、そんな素振りは無かった。
それに、チャニョリヒョンが裏データを手に入れたとして、何になる？
公表する？
裏データに含まれているのは不正の証拠…そうすれば、あの会社は地に落ちると思うけど。
そんなことして、何になるんだよ。
チャンイーシンの意志を受け継ぐ、みたいな？
…いや、公表される前に阻止しなきゃいけない。
俺たちは、仕事を完璧にこなすことで裏社会の一部から高い評価を受けている。
この仕事の依頼者は危ない人間ばかりだ。受け入れた以上、徹底的にしなければ…敵が、増える。
そうなれば…
チラリ、とAを見る。
Aは呑気にチキンに手を伸ばして…まだ食べんのかよ。
本当は、彼女を危険に晒したくない…この世界に連れ込んだのは、俺なのにな。
『…スホ、私も協力する』
『A…いや、やめた方がいいと思うよ…なぁ、カイ』
『…いいんじゃねぇの』
当時、おそらく人格が二重になった頃。
女にうつつを抜かしていると噂されて…周りの目を気にして、なるべくAと関わらないようにしていた頃で。
結果、唯一の女として、大活躍したわけだけど。
今となっては…正直、あまりこの仕事をしてほしくない。
元々、暇だから、というなんとも軽い気持ちで始めた裏の仕事。
今は…俺は、Aを振り向かせるのに忙しいことだし。
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作者名：LUKE | 作成日時：2020年10月17日 23時
