298.分からないの ページ1
＜カイ＞
「…分からないの」
「ん？」
「…今まで、ジョンインの望むことをしてきたから…自分が何をしたいのか、わからない…」
眉間に皺を寄せ、複雑そうな顔をするA。
「…大丈夫。そのうち、分かってくるよ」
ぎゅっと、抱き締めてみる…拒否されない。よかった。
「…俺の、今したいこと、言っていい？」
そう聞くと、Aはゆっくりと顔を上げて俺を見た。
「キス、したい。だめ？」
「…そんなの聞いてきたことなんて、なかったじゃない」
確かに。今までは、したいと思った時に黙ってしてたけど。
「Aは…俺とキス、したい？」
そう聞くと、Aはパッと俯く。
「…し、したいわけじゃない、けど…別に、しても、いい…」
もごもごとそう言うAが…たまらなく、可愛くて。
顎に手を添えて、俺の方を向かせれば、うるうるとした瞳が俺を貫く。
頬は火照って赤くなってて…ヤバい。
「…愛してるよ」
たまらず、そのまま赤くぽってりとした唇にキス、
「だあぁぁぁ！！！やっぱり！！！カイ離れろこのやろー！！！」
突然、Aが腕の中から消え…しまった。
Aに夢中すぎて、ベッキョニヒョンが入ってきたことに気づかなかった…。
「A、大丈夫！？怖かったでしょ！！！」
「あはは…べ、ベク…」
ベッキョニヒョンに抱きかかえられたAは引き攣ったように笑う。
「カイ！俺が近づいてくるのにも気づかないなんてな！！」
べーっと舌を出すベッキョニヒョン…子どもかよ。
「…風呂、入ってくる」
ベッキョニヒョンに気付かなかった自分が悔しくて…頭を冷やそうと、俺は、その場から逃げるようにシャワーに向かった。
でも…拒否されなかった…むしろ、受け入れてくれたのは、たまらなく嬉しい。
そもそも、まともに会話してくれたっていうのも…前まではなかなか無かったことだし。
一歩一歩、着実に距離が近くなっている。
しかし…ベッキョニヒョンが、邪魔だな…。
ジャーッと、シャワーを浴びる。
あんなにくっつかれたんじゃ、Aと2人きりになんてなれない…。
どうしたものか…。
ふと、目の前にある鏡に目が止まる。
前までは…鏡の中の自分が歪んで…ジョンインに、幻覚を見させられてたな…。
“ベッキョニヒョンが、邪魔？じゃあ…”
それは、幻聴なんかじゃない。
紛れもなく、自分の考えていることだった。
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作者名：LUKE | 作成日時：2020年10月17日 23時
