504.求めていたもの ページ8
＜カイ＞
「少しは、楽しくなるかなと思った。でも、退屈だった。知らない政治家が失墜したところで、俺は知ったことじゃなかった。結局、何も変わらなかった。
その時、俺は、何かを求めていた。自分を満たしてくれる、何かを。
そんな時に出会ったのが…Aだったんだよ」
『ねぇ、何してんの』
『げ、カイ…！？』
『やべぇ、カイだ！逃げろ！！』
ただの、暇つぶしのつもりだった。
男3人がかりで詰め寄られていた、ひ弱そうな女を、助けるつもりはなかった。
ただ、俺の取り仕切る歓楽街の真ん中でそんなことをしていたから、邪魔だっただけで。
『…あんた、大丈夫？』
…そう、蹲る女に声をかけたのも、気まぐれだった。
「Aは…俺と、おんなじ悩みを抱えていた。そして、俺は、俺が求めていたものが分かったんだ。それは…理解者、だった」
『理解、されづらくて。人に相談しても、順調な人生じゃないかって。何にそんなに悩むのか分からないって』
『理解…』
そこだけ切り取れば、俺とAはおんなじだった。
『俺が、お前を理解しようとしてやる。だから…お前も、俺を、』
そう言ったのは、気まぐれじゃない。
俺は、彼女に、助けを求めていた。
「そこから、Aは、俺の唯一の理解者になってくれた。全く違う人生を歩んでいたけれど、似たような悩みで苦しんでいた。Aと出会ってから、俺は、大きく変わったんだ」
唯一、俺が本音で話せる人。
素を出せて、それを受け入れてくれる人。
Aに会ってから、俺は、幸せだった。
「俺は、初めて恋愛感情を持った。そして。Aに好きな人がいるって聞いて、取られたくなくて、思い切って告白した。そしたら、受け入れてくれて、付き合うことになった。…まぁ、その好きな人っていうのは、チャニョリヒョン、だったりしたわけだけど…」
チラリ、とチャニョリヒョンを見ると、急に名前を呼ばれて驚いた顔をしていた。
…思えば、チャニョリヒョンのお陰で、付き合うことになった、と言っても過言ではないわけか。
「初めて、俺の人生に幸せ、という感情が舞い降りてきた。大好きな人と一緒にいれて、幸せな日々…でも、それも、長くは続かなかった。
原因は…全て、俺にある」
『最近、カイが1人の女にゾッコンだって、噂になってるけど』
俺の、醜い、プライドのせいで。
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作者名：LUKE | 作成日時：2021年12月22日 5時
