522.お別れ ページ26
＜チャニョル＞
カイはAに背を向けた。酷く頼りない後ろ姿だった。今の彼には、誰の幸せも背負えないだろう。
「…セフナ」
Aはふと、カウンター席に座ってこちらの様子を伺っていたセフンを見た。
「小さい頃から、迷惑をかけた。ごめんなさい、あなたの想いに応えられなくて。でもあなたは、思い込みじゃなく、しっかり自分の意志で私を愛そうとしてくれた。ありがとう」
Aがそう言うと、セフンは一瞬目を開いて、苦い顔をした。
「…やめてよ、そんな言い方…俺の意志は、強いよ」
「ふふっ…うん、知ってる」
2人は、2人だけが通じる感情をそのやりとりに隠したように見えた。何回かこういうことあったけど、こんなことができるのは、幼馴染ならではだろう。
「…スホ」
今度は、Aはセフンの隣で無表情で座っていたジュンミョンさんを見た。
「こんな酷いことをするリーダーとは思えないほど、あなたな仲間想いで、手の焼ける私たちを見守ってくれた。ありがとう」
「…ほんと、大変だったよ、会社でもここでも」
「ふふっ…ごめんなさい」
ジュンミョンさんは、少し口角を上げた後に目を伏せた。それは、寂しそうにも見えた。
「…ジョンデ」
「ん？」
そして、ボックス席に座って泣きそうな顔で笑いながらこちらを見上げるジョンデの方に向く。
「たくさん、お世話になった。たくさん相談にも乗ってもらったし、美味しいお酒もたくさん作ってくれて、ありがとう。今度は…この子の面倒、少し見てあげてほしい」
「ははっ…あの時と逆だね。わかったよ」
「ふふっ…うん、よろしく」
Aの言葉を聞いたジョンデは、立ち上がってカイを支えるように立った。
「しばらくお別れね…また会えるかどうか、分からないけど」
Aはそう言いながらみんなに背を向けて、出口の方に進む。
「…A」
出口のドアに手をかけた時、ジュンミョンさんが呼び止める。
「…お前は、俺たちの分まで背負う必要は無いからな」
Aがこれからどこへ行くのか知ってか知らずか…おそらく察して、ジュンミョンさんは小さく呟くようにそう言った。
「うん、分かってる。私は私の幸せのために生きるわ。悪いわね」
「…俺たちもそうするから、心配するな」
ジュンミョンさんは目を伏せたまま、優しく笑った。
Aは出口のドアを開け、外へ踏み出す。
俺は、何も言わずその後を追った。
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作者名：LUKE | 作成日時：2021年12月22日 5時
