ユウガオは夜に咲く 11 (ページ15)

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511.思いを馳せるページ15

＜セフン＞

『カイも…Aに、囚われてるんじゃないかな。Aだけじゃないと思うよ、カイを幸せにできるのは。それが誰か、とか、何か、とかは分かんないけど』

店を出る前にカイにそう言ったチャニョリヒョンの言葉は…俺にも、響いていた。

俺は、昔からAヌナが好きだった。

小さい頃から、ずっと。

俺はカイの知らないヌナを知ってる。

中学生になって、帰りに買い食いしてぽっちゃりしていくヌナを、俺だけは可愛いと思っていた。

俺がヌナのために買ってきたチキンを幸せそうに頬張る姿も、自分に自信が無くていつも周りを気にしながら恥ずかしそうにしてるヌナも。

真面目で繊細で、年下の俺が支えなきゃって思うほど危ういヌナ。

そのままでいて欲しかった。

実業家だった親に生まれた俺は、起業してボロ儲けしてヌナをお嫁さんにして幸せに暮らす…それが、俺の夢だった。

でも、ヌナはとことん自分に自信が無かった。

『…ダメよ、私なんか好きになっちゃ』

『…なに、私、なんか、って』

『セフナには、もっと素敵な人がいる…』

そう言って、俺の好意に気づいてた癖に、いくらアタックしても取り合ってくれなかった。

経営が波に乗り始めて、ヌナと会う時間も作れるようになって、俺は度々ディナーに呼び出して、アタックし続けた。

でも、毎回、話をはぐらかされるのがオチだった。

そんな中、会っていくうちに、ヌナがどんどん痩せて、綺麗になっていってることに気づいた。

もしかして…という俺の嫌な予感は当たっていた。

『…好きな男でも、できたの？』

『ごほっ…！』

『ヌナ、大丈夫！？』

その動揺っぷりに確信して、調べた結果、1人の男が浮かんできた。

キムジョンイン。どうやら、カイ、という通り名のある、若き権力者らしい。

そいつと仲良くしているらしく、そいつがAヌナを変えてしまったのだ、と。

『…キムカイ。ちょっといい？』

ヌナの幼馴染であることやヌナに思いを寄せていることは隠して、俺はカイに近寄った。

『…最近、カイが1人の女にゾッコンだって、噂になってるけど』

『え？』

『たまに優しくて穏やかな顔をするって。隙だらけで弱くなったもんだって』

俺が当てつけでそう言ったせいで、カイは…そして結局、ヌナを苦しめることになった。

そして、俺も…社長になって金持ちになる夢は叶ったけど、俺の好きなAヌナがいなくなって…色んなことに、無関心になった。

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