510.車中会話 ページ14
＜チャニョル＞
セフンに、スホヒョン、に聞いてくると言われ、3分ほど待って、またドアが開いた。
「俺がAヌナのところまで送る」
セフンはそう言って、車の鍵をチャラチャラさせている。
電車で来てたし、Aの今の居場所は相当遠い場所だから助かる。
「ありがとう、よろしく」
セフンは軽く頷き、早速店を出ようとしていた。
俺は店を出る前、カイのことが気になった。
よほどショックだったのだろう、カイは俯いたまま動かない。
何も言わずに去るのは、少し嫌だった。
「…最後に、１つだけ、いいかな」
俺の言葉にセフンは店のドアノブを掴んで止まり、カイは少しだけ体をピクっと動かした。
『Aにとってのカイは…俺にとっての鎖と、おんなじなんじゃないかって思ってさ』
「カイも…Aに、囚われてるんじゃないかな。Aだけじゃないと思うよ、カイを幸せにできるのは。それが誰か、とか、何か、とかは分かんないけど」
「…オーバーキル、しちゃったんじゃないの」
Aに会いに行く、セフンの車の中。
しばらく黙っていたセフンが、信号待ちでそう口を開く。
「何が？」
「最後の言葉。あの感じ、カイは相当心やられてたみたいだったし」
「…うん、余計な一言だったかも」
「カイのこと知ったような口振りでしたね」
セフンはそう言って俺とは反対の、開けた窓の外を見ている。
「セフンはカイと付き合い長いんだっけ」
「…そんなに」
信号が青になって、セフンは再びハンドルを握り発車する。
「俺よりは長いよね」
「もちろん」
「そっか…どういう、出会いだったの？」
『きっかけは、Aを追ってこのバーの常連客になったセフンに言われた一言だった』
そう、さっきカイが言っていた。
Aの居場所までは遠い。特に話したいこともないし、さっきカイから聞いたことを詳しくセフンにも聞いてみることにした。
「…ヌナを、追って」
カイの言った通りにセフンは答えた。
『好きな人が変わってしまう辛さ、Aヌナもしっかり味わうといいよ』
『どうやったら今のヌナを好きになれんの？』
『…2度と、俺を失恋したみたいな気持ちにさせないで』
「セフンは、Aのこと、好き、なんだよね？」
「…まぁ。でも、昔から俺を見てくれないし。もう慣れたよ。でも…俺は、ヌナがいい」
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作者名：LUKE | 作成日時：2021年12月22日 5時
